サーバーPCの基本を解説

ライセンスとコスト
「サーバー」とは、PCやスマホでアプリやWebサービスを使用しているとき、PCやスマホの通信相手になっている機械とソフトウェアの事である。
「サーバー」という言葉自体は、ハードウェアとソフトウェアの両方を含めた意味の言葉である。
現代のアプリはPCでもスマホ・タブレットでもほとんどがクライアント・サーバーというコンピュータの構成で作られている。
クライアント・サーバーのクライアントとはユーザーが使うPC・スマホ・タブレットなどの端末とそのソフトウェアの事であり、サーバーというのがクライアントの通信相手を務めている通信回線の向こう側にある機械とそのソフトウェアの事である。
この記事では、そのサーバーのハードウェアの解説を重点的に行いたいと思う。
図のようにクライアント・サーバーでは多数のPCやスマホなどが、一台のサーバー機にネットワークを通じて接続し、情報を交換する。
電子メールやLINEやSlackなどチャットアプリも全てサーバーとPCやスマホ端末が通信して、端末同士の通信を実現している。
この図ではサーバー機は一台だが、クラウド・コンピュータなど大規模な仕組みでは何台ものサーバー機が分散協調して稼働している。
ネットワークはインターネットの場合もあるし、社内ネットワークの場合もある。
クライアント・サーバー方式は、インターネットを使わなければならないわけではなく、何らかのネットワークでクライアントとサーバーが繋がり、クライアントとサーバーが役割分担して情報を処理し、サーバーを介してクライアントと他のクライアントが情報を交換する設計のコンピュータ構成を意味する。
クライアント・サーバーについては以前、以下の記事で詳しく解説したので、リンクを張っておく。
興味があれば見て欲しい。
社内業務のように複数の人間がPCやスマホを通じて、情報を共有するシステムを運用するにはサーバー機をどこかに設置しなければならない。
これからサーバー機を設置する為に必要な基礎知識を解説していく。
記事を全て読み終われば、具体的にどんな製品を選び購入すれば良いか、どんな準備が必要か、が分かるようにしている。
リンク先も含めて長い説明になるが、根気よく呼んで欲しい。
少なくともハードウェアとOSの選択の方法は理解できるはずだ。

サーバー機器に求められる信頼性

クライアント・サーバーというのは、要するにPCとPCが通信して情報を処理する仕組みである。
クライアントもPCだが、サーバーもPCなのだ。
サーバー用のPCも、クライアント用のPCと基本的な構造は変わらない。
ただ、サーバー用のPCは、クライアントPCでは求められない高い信頼性が要求される。
サーバー機(サーバー用PC)に要求される信頼性は、第1に故障しにくい点、第2に保存しているデータが失われ難い点が、求められる。
その為の手段として、サーバー機を複数運用し片方が故障しても、もう片方が稼働していればシステムの稼働を維持できるようにするという工夫が施されている。
データが失われないようにする手段も似たようなもので、何重にもハードディスクを装備して多重保存することで、データが失われないようにしている。
この複数のサーバー機やハードディスクを並列運用するのが、非常に難しく、これの為に様々な技術が開発され、運用されている。
サーバー多重化技術のくわしい解説を以下のリンク先記事で行っている。
興味があれば見て欲しい。

代表的なサーバーOS

サーバー機には、サーバー専用のOSが必要になる。
代表的なサーバーOSは、以下の物になる。

Microsoft製品

Windows Server (有料OS)

Linuxディストリビューション

Red Hat Linux (有料OS)
Oracle Linux (有料OS)
SUSE Linux (有料OS)
Debian (無料OS)
Ubuntu Server (無料OS)
Fedora (無料OS)
CentOS (無料OSだが、既にサポート終了)

UNIX

FreeBSD (無料OS)
サーバーOSについての詳細な解説は以下の記事にまとめてある。
各サーバーOSの提供元サイトへのリンクも掲載している。
興味があれば見て欲しい。

ハードウェアから見たサーバーの構成

サーバーに要求される信頼性 の中で詳細に解説していることだが、ここで簡単にハードウェアから見たサーバー機の構成について解説しておく。
クラスタシステムやクラウドコンピュータのような大規模なものを除外すると、中小規模ITシステムはサーバー機を二台で互いにバックアップする構成で設置される。

システム構成

システム構成としては「デュプレックスシステム」か「デュアルシステム」のどちらかを選択している。
デュプレックスシステムとは、サーバーを二台設置して、通常は片方のサーバーでITシステムを稼働させ、そのサーバー機が故障したら予備のサーバー機を稼働させてITシステムを継続運用するシステム構成である。
デュアルシステムとは、サーバーを二台設置して、両方のサーバー機でデータを互いに照合複製して、ハードディスクの内容が同じになる状態を維持しながら、二台のサーバー機で情報処理を分散協調してITシステムを運用するシステム構成である。
片方のサーバーが故障しても、もう片方のサーバーが稼働しているので、ITシステムを継続運用できる。

RAID:レイド

現代のサーバー機は殆どの場合、RAIDというハードディスクの設置方法を採用している。
小型安価なサーバーでさえ最小規模のRAIDを装備している。
RAIDとは複数のハードディスクを一台の仮想的なハードディスクとして使用することができるようにする技術である。
例えばハードディスクの容量が2TBしかなくても複数組み合わせて4TBや8TBにすることもできる。(RAID0)
また、複数のハードディスクをお互いのバックアップとして運用することもできる。(RAID1)
RAID構成 には、RAID0, RAID1, RAID0+1, RAID3, RAID4, RAID5, RAID6 の7つの構成の種類があり、目的に応じて選択する。
ここでは全部紹介しないが、簡単に解説すると、
RAID0は、複数のハードディスクにデータを分割して保存する構成で、ハードディスクが2台あれば2台の合計のディスク容量が確保できる。片方が故障したらサーバーは停止する。
RAID1は、二つのハードディスクにデータを複製して、互いにバックアップする構成(これをミラーリングと呼ぶ)で、片方が停止してももう片方のハードディスクのデータだけでサーバーを運用できる。
故障したハードディスクは新品と交換すると元の状態に復活する。
電源入れたままハードディスクを交換できるサーバー機もある。
RAID0+1は、RAID0の構成を二つ用意して、互いに複製バックアップする構成だ。
RAID3, RAID4, RAID5, RAID6 は、パリティディスクを用意して、複数のハードディスクに効率よくデータを分散し、一部が故障した場合は、パリティチェックにより故障により失われたデータを復元する技術を採用した構成である。
構成の仕方が複数あるので、4つに分かれている。
詳細は、先にリンクで紹介した「サーバーに要求される信頼性」で解説している。

バックアップ

現代のサーバーは周辺機器としてバックアップ装置を、配備して同時運用している。
バックアップ装置の代表格は、RDX(Disk)とLTO(Tape)で、それぞれを組み合わせてバックアップ手順を運用していることが多い。
RDXはバックアップ専用のカセット式ハードディスク。
LTOはバックアップ専用のカセット式磁気テープ装置である。
どちらもカセットにデータを保存することができて、安価で長期保存や移動輸送に適している。
LTOの方がRDXより安い。
バックアップの運用の無いサーバー機というものは存在しないと思って欲しい。
パックアップの運用形態は3種類ある。
D2T(Disk to Tape)とD2D(Disk to Disk)とD2D2T(Disk to Disk to Tape)である。
D2TはRAIDからLTOへ直接バックアップする運用だ。
バックアップするときシステムを一時停止する必要がある。
D2DはRAIDからRDXへ直接バックアップする運用だ。
故障の後の復旧を迅速に行える。
D2D2TはRAIDからRDXへ直接バックアップした後、さらにLTOへバックアップする方式。
故障の後の復旧をRDXから迅速に行えて、LTOを安価に長期のデータ保存ができる。
これらの運用は通常は人力で行う。
詳細は、先にリンクで紹介した「サーバーに要求される信頼性」で解説している。

停電対策

サーバー機は電源が突然切れると壊れる可能性が高い。
運良く壊れなくてもデータの整合性が崩れる可能性がある。
だから、サーバー機は停電時の対策として、予備電源や一時的にサーバー機をシャットダウンする時間を確保するためのバッテリーを設置して運用する必要がある。
このバッテリーのことを無停電電源装置という。
サーバー機を設置するとき、バックアップ装置と同様に、必須の装備である。

ネットワーク機器やセキュリティ機器

この記事ではネットワーク機器やセキュリティ機器については解説していない。
話が長くなりすぎるからだ。
以上、簡単にハードウェアから見たサーバーの構成について解説した。
詳細は、「サーバーに要求される信頼性」 で解説している。

ITシステムを稼働する三種類のプラットフォーム

新規にサーバーを設置するとして、その選択肢は大きく分けて3種類ある。
オンプレミス・サーバーとレンタルサーバーとクラウド・コンピュータの3つである。

オンプレミス・サーバー

オンプレミス・サーバーとは、利用者が自分でサーバー機を購入して、サーバー専用ルームを用意して、サーバーを設置することを意味する。
バックアップも停電対策もセキュリティ対策も全部ユーザーが自分で行う。
対策をしっかりとやっていれば、一番機密性が高いサーバーの設置方法である。
しかし機密情報が流失しても重要データを失っても自己責任である。

レンタルサーバー

レンタルサーバーは、サーバー資源(機能)をインターネット経由で貸し出すレンタルサーバー事業者から、月額定額でサーバーの機能を借りるサービスである。
物理サーバー機を借りるのではなく、サーバーの機能をインターネット経由で借りる。
サーバーを自分で設置する必要が無く、もっとも導入コストの安い方法である。
レンタルサーバーには共用サーバー・専用サーバー・VPSという三つの種類がある。
共用サーバーには自由度が少なく価格が安い。
専用サーバーは完全に自由であるが、価格が高い。
VPSは専用サーバーよりは安いが共用サーバーよりは高く、比較的自由度も高い。

クラウド・コンピュータ

クラウド・コンピュータは、レンタルサーバーと同様にクラウド・コンピュータ事業社からインターネット経由でコンピュータの機能を借りるサービスである。
レンタルサーバーと違い、借りるコンピュータの数を自由に増やしたり減らしたりできる。
提供される機能も豊富だ。
ただし、価格はそれなりに高い。
詳しいことは以下のリンク先の記事で解説している。

サーバーPCの種類

これは、主にオンプレミス・サーバーで、サーバー機を選択する時のガイドである。
サーバー機は、ユーザーの事務所やデータセンターに配置しやすいように、大きく分けて三種類の筐体形式がある。
それぞれ、タワー・サーバー、ラックマウント・サーバー、ブレード・サーバーと呼ぶ。

タワー・サーバー

タワー・サーバーとは、普通のデスクトップパソコンとほぼ同じような筐体のサーバー機である。
普通の事務所に、デスクトップパソコンと並べて設置しやすい形になっている。

ラックマウント・サーバー

ラックマウント・サーバーとは、平べったい四角い板のようなサーバー機である。
縦に、何台も重ねて設置するように、平べったい形に作られている。
狭い場所に沢山のサーバー機を設置する為にこのような形になっている。

ブレード・サーバー

ブレード・サーバーとは、電子回路基盤一枚で一台のサーバーとして機能するように開発されたサーバーで、大きな筐体に複数のサーバー基盤を何枚も挿して設置する。
一番、場所を取らないサーバー機である。
詳しいことは以下のリンク先の記事で解説している。
他にもサーバーの用途によるメモリとストレージの容量の違いについても解説している。

国内サーバーPCの主要メーカー

国内でサーバー機(ハードウェア)を提供している業者は以下のようになる。
まず、比較的国内シェアの高いサーバー・メーカーは以下の6社である。
「富士通」「NEC」「DELL」「HP」「日立」「IBM」
他にサーバーシェアは低いが、新興メーカーとして比較的安価な製品を提供しているのが以下の4社となる。
「Lenovo」「マウスコンピュータ」「EPSON」「IO DATA」

ITシステムの導入の勧め

パンデミックももう2年以上続き、次々と変異株が登場して、いつ終息するのか先が見えない状態が続いている。
政府は感染対策として可能な限りリモートワークを推進し、それが不可能な業種は感染対策を徹底することを要請した。
今も行政は「With コロナ」を推進している。
官公庁の業務のIT化もデジタル庁の設置により急加速し、「帳簿の電子化の義務化」など公的手続きの電子化も法改正で推進している。
企業としてはIT化の推進は避けられない状況だ。
ITの導入においては、現在クラウドコンピュータの導入が進んでいるが、急激な円安によりその価格も急上昇している。
コストを考えると単純にクラウドコンピュータの導入を進めて良いか悩むところだ。
経済安全保障の政策導入もあり、安易に重要情報を海外サーバーに預けるのもリスクが大きい。
そうなると社内にサーバーを設置する必要がある会社も少なくないと思う。
サーバーについて良く分からない初心者の方は、この記事でサーバーの基本について理解していただければ幸いだ。
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