「勤勉の美徳」は有害な価値観かも知れない

2020年12月10日木曜日

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西欧社会は労働を「苦役」と考える価値観があると聞く。

日本社会は「生涯現役」を幸福な人生と捉える点を見ても、天職の労働を「喜び」や「幸福」と捉える伝統がある。

そのため、日本には「勤勉の美徳」という価値観が社会全般に行き渡っている。

 

プログラマーには「懸命なる怠惰」という価値観があり、

「機械にできる仕事は自動化して機械にやらせる」

「自分の仕事を機械化自動化して消滅させる事が美徳」

という考え方がある。

 

あくまで「理想論」ではあるが、プログラマーの仕事はコンピュータに仕事をやらせる事なので、この理想論は大なり小なりプログラマーの本質でもある。

 

だから私の価値観もその職業特性に偏ったところがある。

人間はどうしても自分の専門に思考が偏る。

その点をふまえて聞いて欲しい。

 

「勤勉で無能」は最悪の労働者である

 

勤勉を語る時に良く「能力」と組み合わせて、次のように分類する。

 

怠惰で優秀

勤勉で優秀

怠惰で無能

勤勉で無能

 

優秀な人は怠惰でも勤勉でも役に立つ。

怠惰で無能な人はマニュアル仕事や細かく指揮すれば役に立つ。

しかし、「勤勉で無能」な人は自分から余計な間違った仕事を作り出し、組織全体の業務を混乱させたり逆行させたりしてしまう。

ITシステム開発の世界では開発が遅延したとき、「大変だー出来る事は全部やらなきゃ! 」と言ってやらなくても良い作業を無駄に作り出し、開発チームのリソースを無駄に消耗して逆に遅れを招いたりする。

他にも予備知識の無い外部人材を多数調達して、元のメンバーの教育指導負担を増加させて逆に遅れを招いたりする。

「勤勉で無能」な迷惑な人というのは、企業社会には少なくない。

 

wikipedia百科事典によれば、

この話の元ネタは「ハンス・フォン・ゼークト」という1900年前後を生きたドイツの軍人の持論らしい。

「ゼークトの組織論」と呼ばれるその持論では以下のように説明しているらしい。

利口で勤勉 - 参謀に適している。

利口で怠慢 - 指揮官に適している。

愚鈍で怠慢 - 命令を忠実に実行するのみの役職に適している。

愚鈍で勤勉 - このような者を軍隊において重用してはならない。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%88

 

自分の経験でもこの「ゼークトの組織論」とやらの話はだいたい正しいと思う。

 

「勤勉で無能」は迷惑であり、「無能」であるなら言われたことを忠実にやるべきで、「勤勉」である必要はないと思うし、「勤勉」であってはいけないと思う。

 

疲弊する官僚と医療従事者

医者と言うのは理系の中でも最も勉強が出来て優秀な人がなる職業だ。

その他の看護師など医療従事者もバカではなれないだろうし、報酬も多い。

 

政府官公庁の官僚は文系の中でも最も勉強が出来て優秀な人がなる職業だ。

 

今、コロナ禍の中で官僚と医療従事者には大変な負荷が掛かっている。

 

東京都医師会・尾崎会長「年末が正念場」 医療従事者が疲弊では「医療守れない」

https://news.yahoo.co.jp/articles/3d8bb9442cb7d03d3919ad58893b1090453db1cb

 

新型コロナの診療に関わる医療従事者の精神的な負荷について

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20201128-00209958/

 

霞が関官僚の何とも過酷すぎる労働現場の難題

https://toyokeizai.net/articles/-/391299

 

「在庁時間=労働時間」ではない 横行する官僚のサービス残業、国会開始で過労死リスクも

https://news.yahoo.co.jp/articles/bd21de869ede6203f02f62bceff0f9524f1c656f

 

元厚労省キャリアが明かす「ブラック職場・霞が関で起きていること」

https://president.jp/articles/-/40348?page=1

 

コロナ禍はある種の第三次世界大戦のような状況である。

戦っている相手が人間ではないだけだ。

 

この状況において医療従事者と官僚が超過労働と重い精神的負荷に晒されるのは避けられないかも知れない。

 

ただ、政治家に対して少し意地悪な意見を言わせて貰えば、既に半年以上もこの状況が続いており、現在の第三波が冬に来る事は、夏ごろには予測できたはずである。

 

夏と秋の間に、医療従事者と官僚の負荷を最小限に抑える施策を採れなかったのかと疑問に思う。

 

今になって医療従事者と官僚の労働時間を制限する施策に取り組んでいるようだが、二ヶ月から三ヶ月ほど遅いと思う。

 

医療従事者については本来医療とは関係ない仕事にリソースを採られてしまうなどの問題がずっと昔から言われていた。

官僚については政治家がくだらない要件で官僚を振り回し無駄にリソースを浪費していると聞いている。

 

マネジメントも良くないようだ。

 

優秀な人の勤勉さに甘えているのではないか

夏と秋の間に、医療従事者と官僚の負荷を最小限に抑える施策を採らなかった理由は分からないが、精神面で皆が官僚や医療従事者のような「勤勉で優秀」な人の努力に甘えていたのではないか、と思う。

 

医療従事者と官僚は現場の仕事が忙しく、計画や管理面を見直す余裕はない。

だいたい計画や管理は政治家や病院経営者など、管理層の仕事である。

 

「勤勉の美徳」は個人単位では良き美徳として機能する道徳観念かも知れない。

しかし、組織や社会に当てはめれば、「一部の勤勉で優秀な人に仕事を押しつける」現象を生み、他の人が引き受けられる負荷も引き受けない状態を生んでしまうように思える。

 

私は十年ほど昔に超過労働でバーンアウトした事がある。

前工程の要件定義と基本設計が悪く、システム開発が炎上した。

その時、私は毎日深夜労働、週に二回の徹夜労働、毎週休日出勤という働き方で頑張っていた。

しかし、会社の経営層は「赤字になるから」と開発チームの人員を減らし、問題の原因作った要件定義と基本設計の担当者も外してしまい、8人ほどいた人員が最後は私を含めて2人になってしまった。

 

こんなやり方で成功するわけがないので、私はバーンアウトして病理退職した。

自主退職ではなく病理解雇である。

 

その後このプロジェクトは更に炎上したらしく、その会社の業績も悪化して数年後には社員数も減り、やがて他社に身売りして完全子会社になって、経営層は入れ替わった。

 

この話の教訓は、計画管理の失敗を現場が勤勉な努力でカバーしようとしても、捕捉しきれるものではないという事だ。

 

ではどうすれば良いのか。

 

全員が超過労働を拒否して、業務に従事し続けるのが正しいと思う。

 

私の例で言えば、月20から30時間以上の残業は拒否して、それ以上の開発遅延への対処は管理経営層に無理矢理でも考えさせるべきだった。

 

医療従事者と官僚は提供する労働時間を制限するべきだ。

それで医療と行政サービスが不足するのなら、その課題への対処は政治家や病院経営者の仕事である。

 

現状は「勤勉で優秀」な医療従事者と官僚に、政治家と国民全般が甘えている状態にある。

医療従事者と官僚は提供するリソースは限られている事を、身体が消耗する前の段階で示すべきなのだ。

バーンアウトする前にストライキすべきだ。

 

「勤勉の美徳」は間違っている

以上の話から、「勤勉で無能」は有害であることが分かるし、「勤勉で優秀」である事は組織や社会の人々の「丸投げ」的な怠慢を招くので、やはり良くないと思う。

 

つまり、「勤勉」である事は、組織や社会全体にとって良い事ではない。

計画や管理の担当者の怠慢を招くからである。

 

実際に日本の組織は計画や管理の面が「根性論」や「精神論」に甘えている側面が強く、PERTやアジャイル開発などの合理的マネジメント手法などの導入に消極的である。

 

日本国民は労働法に定められた以上の労働を提供する事を止めるべきであり、それでサービスの供給能力が不足したとき、政治家や経営管理層が計画や管理を見直すことで、対処することを当り前とすべきである。

 

よって、「勤勉の美徳」という価値観は放棄すべきであると思う。

 

勤勉よりも智惠が大事だと思うから。

 

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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