エネルギー政策の4つの誤解

2020年10月29日木曜日

時事 政治

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最近、管総理の所信表明演説が行われ、そこにエネルギー政策に関する文言があった。

https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2020/1026shoshinhyomei.html

 

「我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。  もはや、温暖化への対応は経済成長の制約ではありません。積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。  鍵となるのは、次世代型太陽電池、カーボンリサイクルをはじめとした、革新的なイノベーションです。実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進します。規制改革などの政策を総動員し、グリーン投資の更なる普及を進めるとともに、脱炭素社会の実現に向けて、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど、総力を挙げて取り組みます。環境関連分野のデジタル化により、効率的、効果的にグリーン化を進めていきます。世界のグリーン産業をけん引し、経済と環境の好循環をつくり出してまいります。  省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先で原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立します。長年続けてきた石炭火力発電に対する政策を抜本的に転換します。」

 

この件について、エネルギー政策に関する批判や混乱が政権支持層以外の人々から、少なくない量上がっている。

その話を聞く限り、ほとんどがエネルギーとエネルギー政策の誤解によるものばかりなので、良く誤解されているエネルギー政策について、このブログで解説したいと思う。

ここに書かれている事は、経産省傘下の資源エネルギー庁のサイトでほとんど解説されているので、興味のある人は見てみると良いと思う。

https://www.enecho.meti.go.jp/

 

よくある誤解をテーマに解説していきます。

EV(電気自動車)はエコである

これは大半の人が誤解していると思うが、EV(電気自動車)はまったくエコではない。

EV自体は炭酸ガスを排出しないが、その電力は別の発電所で発電しなければならない。

ガソリン車やディーゼル車がEVに置き換われば、その分の電気エネルギーは追加で発電しなければならない。

発電所を増設し、その分燃料の消費量が増加する。

原発を増設するなら炭酸ガスの排出量は増加しないが、エネルギー安全保障の観点から、全てのエネルギーを単一のエネルギー源に依存するわけにはいかない。

複数のエネルギー源に分散依存する事で、一つ二つのエネルギー源を喪失しても、他のエネルギー源でエネルギーを生産できなければならない。

よってガソリン車やディーゼル車に変わるEVのエネルギー源を原発だけに依存する事はできない。

再生可能エネルギーだけでも同様の理由で駄目である。

そもそも再生可能エネルギーはエネルギーの出力が小さすぎる。

どうしても火力発電の増設が必要になる。

普通に火力発電を増設すれば、炭酸ガスの排出量は増加する。

 

EV(電気自動車)はむしろ炭酸ガス排出量を増やす

火力発電でEVの電力エネルギーを発電して使用する場合、ガソリン車やディーゼル車の内燃機関でエネルギーを得る方法に比べて、余分なエネルギーを生産しなければならない。

 

EVは重い

ガソリン車に比べてEVは部品点数が三分の二ぐらいに減るので構造上は単純になり、一見軽くなりそうだが、バッテリーが非常に重くなり、実際は同じ性能のガソリン車と同様のEVを作ろうとすると、実用にならないほど重くなってしまう。

 

ガソリンエンジンの重さは約120キログラム程度。ガソリンの重さは比重0.75で40リットルなら30キログラム。

合わせて150キロ、タンクの重さを加えても160キロぐらいだろう。

 

同じ航続距離のEVのバッテリーは900キログラム程度になるそうなので、比較にならないほど重くなる。

 

当然、重たいバッテリーを輸送するエネルギーが必要になるので、移動に必要なエネルギーも多くなる。

それだけ発電所を増設しなければならなくなる。

お世辞にもエコとは言えない。

 

現代のEVは航続距離を五分の一に縮小しているから、どうにか実用になっているが、それならガソリン車にした方が性能と環境負荷の面でも良いはずだ。

ガソリン車なら発電所は要らない。

 

エネルギーロスはガソリン車と変わらない

送電ロスの分だけ余分にエネルギーを発電しなければならない。

発電所で発電した電力を家庭や会社まで送電すると日本の場合、5%ほどの電気エネルギーが失われる。

ガソリンの場合、総価格に占める「流通マージン」の割合が5%ほどなので、送電ロスと同じぐらいである。

送電ロスに関しては、ガソリンの流通マージンとあまり変わらない。

 

 

太陽電池や風力発電が未来の主力発電手段になる

これも良く誤解している人がいるが、太陽電池や風力発電は発電エネルギーが小さすぎて、再生可能エネルギーの主力電源には使えない。

太陽電池はどちらかと言えば、次世代エネルギー源というより、従来は電力供給の難しい場所への電力供給を期待されており、既存の火力発電に取って代わる性質の電源では無い。

IoTなどの末端チップなど、電線を繋ぐのが難しい機器に太陽電池で電力供給する事が期待されている。

成層圏を電気プロペラで飛行するLTE基地局などへの利用も検討されている。

災害対策として家庭用太陽電池や信号用や地上基地局用太陽電池なども有力候補だ。

あくまで、電線を繋ぐのが難しい場面での利用に期待されているのであって、火力に変わることを期待されているわけではない。

 

再生可能エネルギーの主力は水力発電とバイオ燃料

経産省のエネルギー計画では、2030年目標で、全エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合は23%程度に増加する計画になっている。

ちなみに火力は56%に縮小、原発は21%程度に拡大する。

 

「エネルギーミックス」実現への道のり(34ページ参照)

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/026_03_00.pdf

 

2018年と2030年計画の比率を比較すると、

再生可能エネルギー全体で 17%から23%程度へ増加。

その内、

水力が 7.7%から 8.8%-9.2%程度へ増加、

太陽光が 6%から 7%へ増加、

バイオマス燃料が 2.3%から 3.7%-4.6%程度に増加する。

 

経産省の計画を見る限り、今後増加する再生可能エネルギーは「水力発電」と「バイオマス燃料」である。

太陽電池の占める比率も多いが、それは現在とあまり変わらない。

 

地熱発電も期待は大きいが、2030年までに建設するのは難しい。もっと後の時代に増加するだろう。

 

火力発電は必ず炭酸ガスを放出する

これは、これまでの常識だったので、現時点で間違っていると断定するのは気が早い。

しかし、最新技術でこの常識が覆ろうとしている。

化石燃料は炭化水素の形で埋蔵されているので、そのまま燃焼させれば大量の炭酸ガスを排出する。

しかし、最新の火力発電では発電する前に、炭素と水素を分離して、炭素は出来るだけ回収して、水素だけで発電する。

 

最新火力発電は炭酸ガスを回収する

第183回 進化する石炭火力発電 〜環境にやさしいIGCC、IGFC〜

https://www.jp.tdk.com/tech-mag/knowledge/183

IGCCを実現する技術のなかに、「CO2分離回収技術」がある。

石炭をガス化する工程のなかで、炭素と水素を分離し、炭素を炭酸ガス化して、分離回収する技術だ。

全ての炭酸ガスを回収できるわけではないようだが、燃料から炭酸ガスが回収できるのなら、回収精度を向上させていけば、何れ炭酸ガスを排出しない石炭火力発電所を開発できる事になる。

石炭でできるのなら、天然ガスのGTCCでも可能なはずである。

 

火力発電だから必ず炭酸ガスを排出するという考え方を見直す必要がある。

日本政府は旧式の石炭発電から撤退を宣言している。

 

非効率石炭火力の廃止と経産省の思惑についての推測

https://www.wake-mob.jp/2020/09/blog-post.html

 

原子力発電は必ずメルトダウンする

東日本大震災の記憶がまだ新しいので、原発と言えばメルトダウンを恐れる人は多いと思う。

個人的には福島原発のメルトダウンが直接的原因で死亡した人はいないので、むしろメルトダウンは大した事ではないのではないかと思っているが、人によってはメルトダウンを感情的に恐れる人は多い。

福島の風評被害を吹聴している人はメルトダウンを課題評価して福島の作物も食べない人もいる。

だから原発といえばメルトダウンを恐れ、原発政策に反対している人の理論的根拠になっている。

 

小型モジュール原子炉はメルトダウンしない

原発の技術も進化しており、現在開発中の最新型原発の「小型モジュール原子炉」では原理上、自然冷却が可能なので、メルトダウンしない。

 

原子力にいま起こっているイノベーション(前編)~次世代の原子炉はどんな姿?

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/smr_01.html

WIRED

https://wired.jp/2020/02/25/the-next-nuclear-plants-will-be-small-svelte-and-safer/

4S (原子炉)

https://ja.wikipedia.org/wiki/4S_(%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89)

安全性の高い小型炉は将来型原子炉として定着できるのか?

http://www.gepr.org/ja/contents/20200122-01/

 

「小型モジュール原子炉」の特徴

最後の記事に「小型モジュール原子炉」の特徴が挙げられている。

 

燃料交換不要

40年分の燃料があらかじめ原子炉に入っているから燃料交換が要らない。

 

制御棒がない

出力制御は原子炉の外の中性子照射に強いクロム鋼製反射体を上げ下げして行う。

非常時にはこの反射体を重力落下させて原子炉を停止させる。

 

自然対流で冷温停止可能

全停電になっても炉心は自然対流で冷温停止できる。だから全停電を防止するために2重、3重の対策をする必要性が全くない。どの地域に設置するにしても自然対流で冷温出来るというのは将来型原子炉の要件“避難不要な原子炉”の特徴を備えているとも言える。

 

 

燃料交換不要なら福島原発のように交換燃料の冷却に失敗して水素爆発するような事故とは無縁である。

制御棒に変わる鋼製反射体は重力で落として、原子炉を停止させるので、電力が失われても原子炉を停止できる。

更に自然冷却で原子炉を冷却できるので、津波で電源が失われても原子炉を冷却できる。

 

メルトダウンは原子炉や交換燃料などの核分裂物質の冷却に失敗して起きるわけだが、その冷却に失敗する要素が初めからない。

「小型モジュール原子炉」が実用化したら、メルトダウンの危険性があるから原発に反対するという理屈が通用しなくなる可能性がある。

 

エネルギー政策には誤解が多すぎる

福島原発の放射能汚染についても、EVや火力発電についても、マスメディアを含めて、基本的な事実誤認やエネルギーについての誤解が多すぎる。

検索すれば分かるレベルの事を勘違いしている。

もう少し、エネルギーについて検索して調べてから、エネルギー政策を評論すべきだろう。

 

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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