BIの議論で忘れられているモノ

2020年9月24日木曜日

経済政策 時事

t f B! P L

 最近また BI (ベーシックインカム)の議論が盛んになっている。

テレビで竹中平蔵氏がBIのことを話題にしたそうだ。

私自身はテレビを見ないので、竹中平蔵氏がどのように BI を語ったのかよく知らない。


ただ Twitter などで流れてくる話を聞く限り、竹中氏は「月7万円のベーシックインカムを支給し生活保護や年金などの社会保障制度は廃止する」というような、今までもよく語られてきた BI の説明と似たような説明をしているものと思われる。


竹中平蔵氏には強力なアンチ勢力がおり、 Twitter の中でも竹中平蔵勢力が批判の声を高めている。


私自身は竹中平蔵氏の政策に関しては特に賛成も反対もしていない。

だからここでは竹中平蔵氏を評価するような話はしない。


ただせっかくBIが話題に上ったので、BIについて今まで気にかかっていたことを話したいと思う。


過去の BI論 


過去に登場したBI案で比較的完成度の高いのは原田泰さんと井上智洋さんのBI案だと思う。





他のBI案を含めて、全てに共通するのは、BIを実現するために必要な財政規模は100兆円であり、支給額は月7万円という 財政と支給額のバランスである。


井上智洋BI案では、BIを二階建て構造に分割し、政府財政で支給する財政BIと、中央銀行から支給する金融BIに分けている。


金融BIはインフレ率の調節のために支給されるもので、デフレの時は金融 BI の金額を増額し、高インフレの時は金融 BI の支給額を減らすという制度である。

金融 BI の財源は通貨発行益になる。

財政 BI の財源は一般会計である。


 財政 BI については井上智洋案においても月額7万円で固定額である。


井上智洋BI案は「信用創造廃止」を想定しており、この点が私は賛成できない。

しかし BI についてどのように考えたら良いのか、を示す良い参考書にはなる。


井上智洋BI案でも財政BIは月額7万円なので、国家財政100兆円規模で月額7万円のBIを支給するという試算は財政政策的に正しいものなのだろうと思う。


だだ、財政の1側面から見てもこの試算だけでは不十分だと思う。


BI 財政論で忘れられているもの


BI論は貨幣制度や財政論、そして社会保障のあり方にいたるまで、とても広い範囲の事を考えなければならないので、その制度設計はとても難しいと思う。


そのためか、過去の BI論も財政の1側面だけ見ても「これは失念しているのではないか ?」と思われる部分がある。


・地方財政と二階建て年金制度


月額7万円の BI を支給するための財源として財政規模100兆円という試算で失念していると思われるのが「地方財政」である。

政府の予算は約100兆円だが、地方財政の予算は総額90兆円ほどである。

一部地方交付税交付金などで被る部分もあるので総額いくらかはちゃんと計算しないとわからないのだが、90兆円の地方財政の予算がBI案から外れているのは確かである。


BI論を語る時、「 BI を導入すれば他の生活保護や年金などの社会保障室は全て必要なくなる」「 BI を導入すると他の社会保障は廃止することになる」よく語られる。


しかし、例えば生活保護の場合、その支給額の半分は政府の負担、残り半分は自治体の負担である。

したがって 政府予算100兆円を財源に7万円の BI を支給するという案には、残り半分の自治体の支給する生活保護費が計算に含まれていない。


年金についても似たようなことが言える。

年金制度は基礎年金部分と厚生年金部分の二階建て構造になっている。

既存の BI案では、基礎年金部分は計算に入れていたり、 入れていなかったりするが、二階の厚生年金部分を含めて計算していないように見える。


他にも40兆円規模の健康保険の財政も存在する。

健康保険には傷病手当金という生活保障制度が存在する。


全ての支給金額は BI が導入されるとBI支給金額分控除することができる。



地方財政と二階建て年金制度を前提に考えると、7万円の BI を導入した場合、生活保護費の半分の政府負担分は消滅して、変わりに BI 7万円が支給される。


生活保護費不足分は残り半分の自治体の財政で支給すれば、現在の水準の生活保護費を支給し続ける事は可能である。

東京なら生活保護費12万円強なので、 BI 7万円との差額5万円強を東京都が支給すれば今と同じ水準の生活保護費+BI 12万円強を支給できる。

都の負担は6万円強から5万円強に減るので財政に余裕ができる。

他の自治体ならもっと財政に余裕ができるだろう。

そして支給金額の総額は変わらない。


年金支給については基礎年金6万円を廃止し、代わりに BI 7万円を支給する。

厚生年金部分については従来と同じ金額を支給する。

厚生年金部分については従来の BI 論の中で計算外になっているはずなので、7万円の BI案を採用しても、厚生年金制度の変更は必要ないはずである。

健康保険制度の傷病手当金においてもその支給金額から BI 7万円を控除することになるので健康保険の歳出も減るはずである。 

入院医療についても同様の効果があると思う。


つまり財政規模100兆円を財源とする限り、 地方財政と厚生年金制度を組み合わせれば、 BI 7万円を導入しても現行の社会保障制度を維持できるはずなのである。


「BI 月額 7万円を採用すると生活保護や年金制度を廃止することになる」という話は、財政面だけから見ても地方財政と厚生年金制度の存在を無視した、かなり「雑」な意見だと思う。


BIはこれに加えて、財政規模がインフレ率にも影響するのでその制度設計はとても複雑になる。経済学者でも十分に考察できないぐらい難しいのだと思う。

あまり簡単に考えすぎない方が良い。

今のところ、実装可能なBI論は見当たらないと思う。

全てのBI論は「未完成」と考えて良いと思う。


この話は以前から気になっていたので、竹中平蔵氏のBI騒ぎに便乗して、この機会に突っ込んでおきたい。


このブログを検索

Translate

人気の投稿

自己紹介

自分の写真
オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

QooQ