なぜ起業が「give,give,give」なのか債務と債権のマクロ経済視点で考えてみた。

2019年10月6日日曜日

経済政策

t f B! P L

起業を薦めたり、ビジネスの方法論を説いたりする人々が共通して言う台詞に、
「give,give,give」
というものがある。

「まず価値を作って与えろ。
与えていけば、富を生み出せる。
give and take じゃない。
give and give だ。
give, give, giveだ。」

という意見だ。

私はビジネスに疎いので、これが正しいか確証がない。

しかし、リフレ的な国家経済の視点からこの話を考えたとき、
結構「理に適っているのではないか」と思った。

それについて今日は語ってみたい。

債権は債務が発生したときに生じる


富と言えば色々と異論があるかも知れないが、
取りあえず「貨幣」の量が富に比例すると思う。
価値を交換するにはその価値の量だけの貨幣が必要になるからだ。

ではその貨幣がいつどのように生まれるかについて考えてみる。

貨幣は日銀(中央銀行)が発行する。

昔は金貨や小判など鋳造貨幣を造り政府予算に使うことで市場に流出していた。

現代では、日銀が量的緩和で市中銀行から法定準備金として預かっている日銀当座預金というものがあり、
これの残高を増やすことにより貨幣の総量を増やす。
量的緩和では預金が増えるだけなので、実際に取引や消費に使われる貨幣量を増やすために、
低金利政策を行い、市中銀行からの企業への融資を増やす事で、貨幣を市中へ流出させる。

ここで面白い現象が起きる。

単純に考えれば日銀が量的緩和で増加した準備金の額だけしか貨幣は増えないと思うだろう。
しかし、実際は増加した準備金の額を超える貨幣が増加する。

貨幣の量を量る尺度にマネタリーベースとマネーサプライ(マネーストック)というものがある。

マネタリーベースは政府と日銀が保有する通貨と市中銀行の預金の総量である。
マネタリーベースは日銀の金融政策によりその総量を制御することができる。

これにたいしてマネーサプライという尺度がある。
現在はマネーサプライという言葉は正式には使われていなくて、現在はマネーストックという言葉に置き換わっている。
言葉の示す貨幣量の定義が変わったので言葉も変わったのだが、だいだい両者は同じ物と考えて差し支えないと思う。

マネーストックは3種類あるのだが、簡単に言えば政府と日銀が保有する以外の貨幣の総量である。

市中(民間)が保有する貨幣量と言っても良い。

マネーサプライ(マネーストック)とマネタリーベースの間には以下の関係が成り立つ。

マネーサプライ = マネタリーベース × 貨幣乗数

貨幣乗数はプラスの値である。
時とともにその値は変動するのだが、基本的に貨幣乗数は1より大きい値になる。
つまり、日銀が増加した貨幣より多くの貨幣が現われるということである。
この現象を「信用創造」と呼ぶ。
この話を数式ではなく会計式で表すと次のようになる。

市中銀行は沢山あるが、仮に全ての市中銀行が一つの銀行だと仮定する。
国民は皆、市中銀行に預金を預ける。

AさんがBさんに100万円を貸したとする。
するとAさんの銀行預金から100万円の預金が減り、Bさんの銀行預金が100万円増えることになる。
さらにAさんは100万円の債権(借用証書)という債権を入手する。

Aさんが現在所有する金融資産は100万円の債権である。
Bさんが現在所有する金融資産は100万円の預金である。
もちろんBさんには100万円の債務が存在する。

しかしこの話の全体をまとめて見ると、

AさんがBさんに100万円を貸す前には、
Aさんの100万円しか金融資産が存在しなかったのに、

AさんがBさんに100万円を貸した後には、
Aさんには100万円の債権が存在し、
Bさんには100万円の預金が存在する。
Bさんには100万円の債務が存在するが、
だからと言ってそれによりBさんが100万円の預金を使えなくなるわけで無い。
Aさんの金融資産は減少していない上に、
Bさんの使える金融資産は100万円増えているのだ。

つまり、AさんがBさんに100万円を貸すことにより
世界の金融資産が100万円増えたことになる。

これは貨幣量が100万円増えたことになる。

この現象を「信用創造」と呼ぶ。

別の説明の仕方もある。

Aさんの預金もBさんの預金も市中銀行にある。
市中銀行が90万円の融資をする場合、
Aさんの100万円の預金から90万円をBさんへ融資することができる。
(準備金比率10%の場合)
しかしBさんの預金も市中銀行に預けるので、市中銀行の預金はAさんの100万円とBさんの90万円の合計で190万円になる。
つまり日銀が発行した通貨より多くの貨幣が生じることになる。
もちろんBさんには90万円の債務が生じるがそれにより90万円の預金が使えなくなるわけではない。

先に説明した、

マネーサプライ = マネタリーベース × 貨幣乗数

という数式がこれを意味している。

言い換えると、金融資産は債務が発生したときに、新たな債権が生まれると言える。

価値は債務から生まれる


この話を give, give, give の話に置き換えて考えてみる。

ビジネスにおいては先に価値を生み出し、それを顧客候補となる誰かに与えるところから、最初の債権と債務が生まれる。
最初の債権と債務は金融資産ではない形で生じる。

なぜなら全ての価値は金融資産ではないからだ。

そもそも金融資産とは価値と価値を交換する為の道具でありそれ自体は価値を持たない。

だから最初に生み出される価値は全て金融資産ではない形で生み出される。

よく考えると当たり前の話だ。

「最初に価値を与えろ、giveが大事だ」

とビジネスの指導者は言う。

これは最初に無料で何かの価値を供給者が与えると、
それを無料で受け取った者はその価値に依存した状態になる。
言い換えれば、無料で受け取ったことにより債務を抱えることになる。

もちろんこの債務に返済義務は無い。
しかし、この価値にそれを受け取った者は依存することになる。

この依存が「債務」なのだ。

つまり、価値を与える事は、受け取った者に対して債務を配り、それと同額の債権を得ていることになる。

マクロでは債権と債務の総額は同じである。

無料で与えるという行為は、信用創造と同じで、この世に存在しなかった価値を生み出す行為なのだ。

債務を抱えた消費者はやがて、「安定して価値を受け取る」ことを望むようになる。
無料の価値に依存していることが不安になるからだ。
ある日突然に価値の無料提供が終わったらどうしよう ?
と思うから。

だから、対価として貨幣を支払おうとする。

これにより、供給する価値と、対価としての貨幣の支払いという、価値の交換が始まるようになる。

これがビジネスの始まりということになる。

最初に、「与えよ」「give, give, give」という考え方は、
信用創造の考え方に照らし合わせると正しい価値の創造の仕方であると言える。

価値は金融資産以外の所に存在する


逆に、世間の貨幣第一主義は、価値の本来の存在する場所を間違えているといえる。

貨幣を含む金融資産は価値を交換する道具に過ぎない。

それ自体には価値はない。

だから価値を生み出すなら、貨幣(金融資産)以外のものに注目しなければ、
生み出せないのだと思う。

起業を薦めたり、ビジネスの方法論を説いたりする人々が共通して、
「give,give,give」
というのは、そういう理由によるものなのではないかと思う。

経団連や経済同友会など財界人はマクロ経済音痴だが、
ビジネスの方法論を説いている人達の言っている「give,give,give」という台詞は、
経済学的に見ても間違っていないと思う。


ただの考察でした。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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