公共投資は本当に減少しているのか - 1990年代の公共投資規模は異常だった

2019年10月18日金曜日

経済政策 政治

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公共投資が削減されていると主張する経済クラスタ


SNSを見ているとMMT派を中心とした経済クラスタが「公共投資が削減されている」「安倍政権は緊縮財政」という話が吹聴されている。
リフレ派も歳出の拡大によるデフレ脱却を訴えており、その理想に比べて歳出が不十分という意味で政府歳出と公共投資の拡大を主張している。

彼らの主張でよく見かけるのは、
「公的固定資本形成が削減されている」
「公共事業関係費が減少している」
と他に、公共事業関係費の構成予算の一部を取り出し予算の削減を批判するものだ。

しかし、これらの主張は事実に反すると思う。

公的固定資本形成と公共事業関係費は違う


国家の公共投資の総額は「公的固定資本形成」の金額を見る。
固定資本は固定資産とほぼ同じである。
ダムや道路やその他公的なインフラの事である。

これと似た言葉に「公共事業関係費」という予算がある。
これは公的固定資本形成によって建設したインフラの維持費のことである。

金額も公的固定資本形成は25兆円ほどなのに対し、
公共事業関係費は7兆円ほどで規模が全く違う。

公共事業関係費の総額は近年減少しているが、公的固定資本形成は特に減少はしていない。

公共投資は減少しているのか


具体的なデータを見てみよう。

以下は内閣府GDP統計からの引用データである。
(単位は10億円)

暦年
実質GDP
公的固定資本形成
GDP比率
1994
425,434.10
43,999.40
10.3%
1995
437,100.10
44,188.40
10.1%
1996
450,650.20
46,699.00
10.4%
1997
455,499.40
43,522.10
9.6%
1998
450,359.50
41,721.50
9.3%
1999
449,224.80
44,296.00
9.9%
2000
461,711.60
39,993.60
8.7%
2001
463,587.70
38,513.20
8.3%
2002
464,134.70
36,713.50
7.9%
2003
471,227.70
34,151.20
7.2%
2004
481,616.80
31,061.40
6.4%
2005
489,624.50
28,508.70
5.8%
2006
496,577.20
27,125.30
5.5%
2007
504,791.50
25,661.60
5.1%
2008
499,271.40
24,398.30
4.9%
2009
472,228.80
26,067.30
5.5%
2010
492,023.40
25,493.10
5.2%
2011
491,455.50
23,893.20
4.9%
2012
498,803.20
24,526.40
4.9%
2013
508,780.60
26,181.30
5.1%
2014
510,687.10
26,374.40
5.2%
2015
516,932.40
25,914.70
5.0%
2016
520,081.10
25,826.90
5.0%
2017
530,084.30
26,003.80
4.9%
2018
534,236.70
25,153.90
4.7%

グラフ図「GDPと公共投資」


SNSなどでは「公共投資は1998年頃から急速に減少し、小泉政権及び民主党政権により更に減少している」という一点を根拠にして、「現在の公共投資は少なすぎる、緊縮財政だ」とする意見をとても良く聞く。

しかし、このデータは1994年以降のデータしかない。
1992年にはバブル崩壊を起こっており、その経済対策に大型の財政出動が行われている。

バブル以前のデータも見なければ適切な公共投資の水準はわからないと思う。

そこで、1980年から2009年のデータも内閣府からダウンロードして見てみよう。
このデータには「公的固定資本形成」の値がなく代わりに「総固定資本形成」の総額が記載されている。
両者の集計基準は同じではないので単純に比較できない。
だからデータも別々のまま繋いでいない。
(単位は10億円)

暦年
国内総生産
(支出側)
総固定資本形成
(公的)
GDP比率
1980
284375
25427.9
8.9%
1981
296252.9
26411.3
8.9%
1982
306256.2
25647.9
8.4%
1983
315629.9
25332.2
8.0%
1984
329719.3
25105.7
7.6%
1985
350601.6
23347.4
6.7%
1986
360527.4
24250.4
6.7%
1987
375335.8
25490.5
6.8%
1988
402159.9
26893.3
6.7%
1989
423756.5
26778.7
6.3%
1990
447369.9
28429.9
6.4%
1991
462242
29171.7
6.3%
1992
466027.9
33916.7
7.3%
1993
466825.1
37848.4
8.1%
1994
470856.5
38430.5
8.2%
1995
479716.4
38682.1
8.1%
1996
492367.9
40883.1
8.3%
1997
500066.4
37747.3
7.5%
1998
489820.7
36166
7.4%
1999
489130
38215.8
7.8%
2000
503119.8
34412.3
6.8%
2001
504047.5
33385.6
6.6%
2002
505369.4
31792.2
6.3%
2003
512513
28355.1
5.5%
2004
526577.7
25815.4
4.9%
2005
536762.2
23203.6
4.3%
2006
547709.3
21880.5
4.0%
2007
560650.8
20264.7
3.6%
2008
554117.6
18529.2
3.3%
2009
519277
20462.4
3.9%

グラフ図(GDPと公共投資・過去)


1990年代の公共投資は異常に大きい


SNS系経済クラスタの中では
「公共投資は1998年頃から急速に減少し、小泉政権及び民主党政権により更に減少している。
安倍政権になっても1990年代の公共投資の水準には遠く及ばないので、緊縮財政と同じだ」
という説明に近い意見が散見される。

公的固定資本形成の総額が確認できる内閣府のGDP統計では1994年以降のGDPデータしか記載されていない。
しかし過去のデータを見ると1993年から1997年まで急速に公共投資が増加していることが分かる。
過去のデータでは公的固定資本形成の代わりに総固定資本形成という異なる値が使用されているため、単純に両者の値の大小を比較することはできない。
しかし両者のデータを見比べると、1990年代の公共投資が異常に大きかったことが理解できる。

グラフ図「公共投資の推移」

グラフ図「公共投資の推移・過去」


1992年にバブル崩壊が起こっている。
その後、政府は経済対策で公共投資の急拡大を行った。
1993年から1997年までの大きな公共投資額はバブル崩壊への経済対策として行われたものであり、公共投資額として適切な金額ではないと考えた方が自然だと思う。

つまり異常に大きい1990年代の公共投資総額と現在の公共投資総額を比較することが間違いなのだ。
むしろ比較するなら1980年代の公共投資総額と現在の公共投資総額を比較するのが正しい。

残念ながら1993年以前の公的固定資本形成のデータはなく代わりに総固定資産形成のデータがある。
集計基準が違うので単純に比較できない。

1980年代は急速にGDPが増加していた時代でもあり、公共投資の対GDP比率も現在とは状況が違いすぎて比較対象に相応しくない。
当時は財政収支も均衡しており国債発行額も少なかった。

ただデータを見ると1990年代の財政支出が異常に大きいのは分かると思う。

現在の公共投資の水準は妥当な水準

過去のデータを見ると小泉政権と民主党政権の公共事業削減はやり過ぎであるのは分かるが、橋本龍太郎政権の公共事業削減は、1990年以前の水準に戻しただけであり適切な水準であると言える。

安倍政権になって公的固定資本形成の金額は25兆円程度になっており、この数字は1980年代の総固定資本形成と同水準である。

公共投資は国土に合わせて行うべきでGDPは関係無い

安倍政権時代の公共投資の対GDP比率は下がっているが、これはGDPが成長しているのでやむを得ないと思う。
国家に必要な公共投資規模は国土の広さと性質に従属するのでGDPがある程度成長すると公共投資の対GDP比率は減少するのが、当然と言えるからだ。

GDPが成長したからと言って国土が広がるわけではない。

25兆円という規模は、日本の公共事業の適正な規模なのかも知れない。

また、公共投資という物は一度ダムや橋や道路・堤防を完成させるとそれを何十年も使用する。
つまり毎年インフラは増加蓄積していく。
インフラには過去の蓄積もあることを認識する必要がある。
後世になるほど過去の蓄積が増えていき、急いでインフラを拡大する必要が無くなるということだ。
国土強靱化などの投資を怠って良いわけではないが、急いでインフラを拡大する状況でもない。

公共投資は減少していない

結論として、公共投資は減少したのではなく、1990年代の公共投資の水準が異常に大きかったため、その後適正水準に調節されたとみるのが現実的と考える。
1990年代の公共投資が異常に増大したのは、バブル崩壊への経済対策のためと考えられる。

公共投資の対GDP比率は1980年代に比べて減少しているが、これはGDPが成長したからである。
1980年のGDPは、284兆円。
1985年のGDPは、350兆円。
1990年のGDPは、447兆円である。

2018年のGDPは、534兆円で名目なら555兆円である。

もう一度言うが、

GDPが増えたからと言って国土が広がるわけではない

インフラは過去の蓄積がある。

よって「公共投資は削減されている」とするSNS系経済クラスタの俗説は真実ではないと考える。

データを見て自分で考えてみて欲しい。


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