次元の違う二つのことを、別々に独立して考えられない人が多すぎる

2019年9月18日水曜日

閑話 経済政策

t f B! P L

四角形の面積(x長 × y長)


四角形(長方形・平行四辺形)の面積は「底辺幅 × 高さ」で求める。

面積を広げる時は、「底辺幅を広げる」ことと「高さを伸ばす」ことの二つの方法がある。
もちろん両方やっても良い。

「底辺幅を広げる」と「高さを伸ばせなくなる」ことはない。
逆もない。

「底辺幅を広げる」ことと、「高さを伸ばす」ことは互いに独立していて関係がない。

「当たり前だろ! 何を初歩的な話をしているんだ。バカにするな」と思われるだろう。

幅(x座標)と高さ(y座標)は次元が違う。

四角形の面積なら誰でも、このように「次元の違う二つのことを、別々に独立して考える」ことができる。

しかし、他の事柄ではこれができない人が多い。

人間の思考能力には限界があるから、次元の数が増えすぎるとそれぞれの次元を把握できなくなる。
四次元になるともうダメだろう。

しかし小学校の算数と中学校の数学で、面積と体積の求め方を通じて次元という概念を習っているので、二次元と三次元は把握できるはずだ。

x,y,z 座標に分けて考えることは誰でもできる。

合計量と個々の量


「会社の合計所得」とそこで働く「社員の個々人の所得」の関係も次元が違う。

この場合も合計所得と社員の所得は次元が違い、互いに独立している。

四角形の面積の話との違いは社員の所得が会社の合計所得を超えることはできない点だけである。

会社の合計所得を増やしたければ、銀行融資を受けて事業拡大して、社員数を増やせば合計所得は増える。

しかし社員の給料を上げなければ、社員の個人所得は増えない。

逆に合計所得を引き上げなくても、社員の所得を増やす事はできる。
設備投資で業務の一部を自動化し、社員をリストラなどで減らせば、残った社員の所得は増える。
この場合、売上が同じなら「会社の合計所得」は変わっていない。

これも普通の人は理解できるはずだ。

合計値と平均値


実質賃金という指標がある。
実質賃金とは国民全体の中で、雇用され賃金所得を受けている人々の平均賃金の額である。

アベノミクスが始まってから、この実質賃金値は減り続けている。

アベノミクスが始まってから、雇用者数は増え続けており、国民全体の賃金所得の合計は増え続けている。

所得税税収も増加しており、国民の所得の合計は増加している。

また給与所得者の賃金も上昇している。

平均値である実質賃金が下落するのは、新規雇用者が初めて雇用された場合、雇用実績(実務経験)がないため、既存の雇用者に比べて低い賃金で雇用されるので、賃金の平均値が下がるからである。

反安部系の政治論客は、この性質を利用して「安倍政権になって雇用者の賃金が下がった。安倍政権の失敗だ」と政権批判を展開している。
これは「賃金の合計値」と「個々人の賃金値」と「平均値」という、それぞれ次元の違う値の違いを認識できない人々を、欺く数字のトリックである。

実質賃金という平均値は、むしろ不景気で失業者が増大する局面で増加する。
賃金の低い、弱い立場の雇用者が解雇されて、賃金水準の低い雇用者の総数が減る。
結果として、賃金の平均値は増加するからだ。

この場合は「賃金の合計値」は減少し所得税税収も減る。
所得税を払える人が減るからだ。

国家の合計所得と国民個人の所得


経済にはGDP三面等価の法則というものがある。

フローとストックの内、フローについての法則である。(GDPはフローです)

「国家全体の市場の中では、付加価値(利益)の合計と消費の合計と所得の合計は、同じになる」
という法則である。

生産量の合計は異なる値になる。
作った物が全て売れるわけではないからだ。
生産量の合計を「潜在GDP」という。

潜在GDP(供給)と、GDP(需要)は一致しない。
両者の差を表した指標がGDPギャップである。

GDPギャップ = GDP(需要) - 潜在GDP(供給)

これがマイナスになるとデフレになりプラスになるとインフレになる。

GDP(需要)が少し大きいぐらいがちょうど良いのが分かると思う。
2016年第三四半期までは マイナスだった。
現在は 1.3% から 1.9% の間を前後している。

インフレになれば生産した物が売れ、売った者は対価を得て所得が増える。
するとその者は消費を増やし、また生産した物が売れる。
これにより国民全体の所得の合計(GDP)が増える。

GDPは国民全体の所得の合計である。
国民一人一人の所得を合計した値である。
GDPと国民個人の所得の関係は次元が違う。

GDPを増やす経済政策と、国民個々人の所得を増やす政策は、次元が違う。

国民個々人の所得を増やす政策は、全て所得の分配政策になる。
最低賃金引き上げ、累進課税による富裕層から中間層(及び相対的貧困層)への所得の再分配。
法人税による黒字法人から中間層(及び相対的貧困層)への所得の再分配。

いずれも国民全体の所得の合計を、収入に占める消費の割合が多い、中間層(及び相対的貧困層)へ分配する事により国家全体の消費総額を最大化する政策である。

GDPを増やす経済政策はこれとは全く異なる考え方で、GDPギャップをプラスにすることにより、所得の合計を増加する。

ワルラスの法則というものがリフレ政策の土台にある。

引数(パラメータ)で与えた個別市場の需給ギャップを返す関数「f」があると仮定する。

例えばこの関数に自動車市場を引数に与えたとする。

自動車市場は0.2%の供給過剰の需要不足だとする。
するとこの関数は以下の値を返す。

-0.2% = f(自動車)

市場の切り分け方は自由だが、互いに重複しないものとする。

この関数に国家の市場全ての引数をそれぞれ与えたとする。

-0.2% = f(自動車)
-0.1% = f(家電)
-0.5% = f(鉄鋼)
-0.3% = f(住宅)
0% = f(穀物)
....
-0.2% = f(労働)
....
-0.2% = f(株式)
0% = f(国債)
....
20%=f(貨幣)

この関数の値を全て合計すると必ず「0%」になる。
これがワルラスの法則というものだ。

この例では f(貨幣) 以外はほとんどマイナスになっている。
つまり供給過剰の需要不足、「デフレ」である。

デフレでは消費が減りGDPが減少していくので、インフレにする必要がある。

全ての f() の合計は 0% になるのだから、プラスの値の市場をマイナスにすれば、他の市場はプラスになる。
この場合は f(貨幣) を供給過剰の需要不足にして値をマイナスにしてやれば、他の f() の値はプラスになる。

これがリフレ政策であり、
金融緩和はこれが前提で行われている。

言い換えれば「貨幣」需要を、「その他」の需要に移しているとも言える。

個々の国民の所得を増やす「税と再分配」の考え方とは、まったく次元が違うのだ。

再分配政策では、貨幣市場をまったくコントロールできないが、リフレ政策では貨幣の需要を他の市場へ移すことができる。

リフレ政策は別名「マクロ経済政策」、再分配は別名「ミクロ経済政策」とも呼ばれる。

両者は「貨幣」需要をコントロールするか否かで、考え方が異なり、次元がまったく異なる。

「GDPより再分配を」は「高さを伸ばすより幅を広げろ」と同じ


アベノミクスやリフレ政策に批判的な人の中には、「GDPを増加させる金融政策などより、再分配政策を実施すべきだ」という意味の批判をする人が多い。
これにはバリエーションが色々あって、
「GDPを増加するより偽装請負や非正規雇用などの不正な雇用慣習を改善する方が重要だ」
「マネーサプライ増加するより、査定能力失った銀行を改革し融資を健全化しなければインフレなんか起きない」
「金融政策で企業ばかりを儲けさせても、実質賃金低下で労働者の所得に反映しなければ意味がない」
など実に沢山の種類がある。(最後は事実誤認でもある)

これら全てに共通するのは、金融政策とその他のミクロ経済政策は両方実施することができることを理解していないことだ。

「金融緩和&財政拡大」と「偽装請負や非正規雇用などの不正な雇用慣習を改善する」ことはどちらも実施可能であり、実際に働き方改革で行われている。

「金融緩和&財政拡大」と「銀行を改革し融資を健全化する」ことも、両方実施可能である。
銀行改革している間は、金融緩和することができないということはない。

「金融緩和&財政拡大」と「再分配を増加し労働者の賃金水準を引き上げる政策」は、両方実施可能である。
両者は排他的な関係ではなく互いに独立している。

これらの主張は、四角形の面積に例えると
「面積を増やすためには高さなんか伸ばすより、幅を増やすべきだ」
と主張しているのと同じだ。

高さを伸ばしても、幅を増やしても、面積は増える。

高さと幅を両方増やすこともできる。

少なくとも高さを増やすと、幅を増やすことができない、ことはない。
逆も同様だ。

少し複雑な話になると次元の違いを忘れてしまう


実質賃金や、マクロ経済政策とミクロ経済政策の関係のように、少し複雑になると次元の違う二つのことを、別々に考えられない人が、多く見られるようになった。

彼らは別に頭が悪いわけではない。
知識階級や高学歴の人も多いし、ビジネスなどで高い成果を上げている方々も多い。

多分、よく考えないで、視界に入る範囲内しか見ないため、両者の次元が違うことに気がついていないだけだと思う。

あるいは初歩的な経済や簿記会計の基礎知識を知らない場合もあると思う。

リフレ派の先生方が私のような素人でも理解できるように、分かりやすく解説しているので、その話を良く聞けば経済学の知識がなくてもある程度理解できる概念である。
教養や学力より「検索して調べているか否か」の違いでしかないと思う。

もう少し、調べてみてから、考えた方が良いと思う。

このブログを検索

Translate

人気の投稿

自己紹介

自分の写真
オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

QooQ