シンギュラリティの話は話半分に聞いておけ

2019年7月15日月曜日

システム開発 雇用 時事

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巷で騒がれるAIの進歩によってもたらされると言われるシンギュラリティだが、
ざっくりと説明すると次のような話になる。

「コンピュータの性能は18ヶ月で2倍になり、2045年には人間の知能を超えて、AIが自分で自分を開発し、その性能向上は人間の手を離れて、予測不可能なものになる」

「コンピュータの性能は18ヶ月で2倍になる」という話は「ムーアの法則」というもので、これまでのCPUの性能向上ではこの法則が成立していた。

シンギュラリティとはこの話を延長した話で「プロセッサ内のトランジスタの数が、2045年頃に人間のニューロンの数を超えるので、そのときコンピュータの性能は人間の性能を超えるだろう」という、かなり大雑把な話だ。

シンギュラリティには後から色々尾ひれが付いて、明確な定義も定まらない「フワッ」っとした話になっている。
しかし、世間の人々はむしろ数学や物理学的に明確な話より、「フワッ」っとした曖昧でなんとなくスゴそうな話にコロッと騙されるので、シンギュラリティのような曖昧な話の方が受け入れられやすい。

マイナスイオンとか水素水とか添加物とか放射脳とかどーでもいいよーなオカルトが人々は大好きだ。

「日本の借金は世界一、ハイパーインフレガー」なんて与太話にも喜んで飛びつく。

最近は「米国民主党とグローバル資本家の陰謀」が流行っているらしい。

「新自由主義の陰謀ガー」ってのは今でもやってるな。

少し前まで「ロスチャイルド家の陰謀」が流行っていた。
なんでもロスチャイルド家は世界の中央銀行を支配しており、世界の政治家を思うままに操っているそうな。


日本銀行法

第八条 日本銀行の資本金は、政府及び政府以外の者からの出資による一億円とする。
2 前項の日本銀行の資本金のうち政府からの出資の額は、五千五百万円を下回ってはならない。


「アポロの月面着陸もNASAの偽造だー」と主張している人々がいるので、どこからどんな嘘が飛んでくるか分からない。

でもこれらの与太話は少し調べると簡単にボロが出る。

取りあえず今回は「シンギュラリティ」の与太話について解説したい。

シンギュラリティの問題点


シンギュラリティの問題点をざっくりと並べると以下のようになる。

・人間はまだ脳の性能について十分に理解できていない

・自我や意識については何も分かっていない

・AIについて人々は誤解している

・「ムーアの法則」は限界を迎えつつある

・技術的特異点というものは明確に定義できない

一つずつ解説する。

人間はまだ脳の性能について十分に理解できていない


初期のシンギュラリティの根拠は「ムーアの法則」によりプロセッサの性能が18ヶ月で2倍になれば、2045年ごろにはプロセッサのトランジスタの数が人間のニューロンの数を超えるので、コンピュータの知能は人間の知能を超えるというものだ。

聞いていて分かると思うが、元々のシンギュラリティは「トランジスタの数」だけが「コンピュータの知能が人間の知能を超える」ことの根拠だった。
最近は色々内容を改変しているが、内容が複雑になればなるほど、2045年という技術的特異点の時期は不明確になる。

この話の致命的欠点を上げると、「科学的には人間の脳細胞やニューロンの正確な数は分かっていない」という点にある。
検索して調べて貰えば分かるが、脳細胞の数は下は1000億個から上は2000億個とも言われており、数が大雑把すぎてよく分からない。
また、脳細胞の中にはニューロンがいくつも存在するのだが、この数もよく分からない。
860億個という話もあるし、1000兆個という話もある。
数えている対象が前頭葉のニューロンだけだったりもする。
どれが本当なのか、数え方の違いなのか、はっきりと分からない。

脳細胞の数は下は1000億個から上は2000億個という話は良く聞くので、たぶんこの話が一番信頼できる数字だと思うが、それでも値の範囲が広すぎる。上と下で2倍も違うのなら「ほとんど分かっていない」というのが実状ではないだろうか。

脳科学などの専門家の記事や書籍を読むと、「人間の脳はまたまだ謎だらけでそれらを解明するには時間がかかる」という意味の台詞を聞く。

脳細胞の数もはっきり分からないのに、「プロセッサのトランジスタの数が人間のニューロンの数を超える」時期などハッキリ分かるわけがない。

人間はまだ、人間の脳について分かっていないことを自覚すべきだ。

自我や意識については何も分かっていない


もう一つの問題として、ハードウェアとしての脳についても良く分かっていない上に、自我や意識といったソフトウェアについては、もっと分かっていない点にある。

自我とは何か、意識とはどこから発生しているのか。

これが分からなければコンピュータが人間の命令なしで自立して考え行動するなど不可能である。

今のまならコンピュータが高い知能を保有しても、意識を持つことはなく、ただ人間より知能の高い道具でしかない。

自我について、まだ研究が始まったばかりだと聞く。

いつ、自我や意識をコンピュータで実装できるか、予想できる段階にはない。

AIについて人々は誤解している


一般に語られるAIについて人々はかなり誤解している。

AIは大きく分けて「弱いAI」と「強いAI」に分かれる。

「弱いAI」は現在急速に進歩している機械学習などが該当する。
大量のデータを解析して統計的に課題を解決するアルゴリズムを生成するAIのことだ。
生成されるアルゴリズムは「猫の顔を認識する」「音声を理解する」など認識系の処理を得意とする。
限られた課題の解決にしか使えないので、人間の仕事を完全に肩代わりできるようなAIではない。
ハッキリ言って今のコンピュータが少し高性能になった程度の技術である。

シンギュラリティとは縁のないものだ。

むしろ企業の業務の現場でITシステム同様に「どのように機械学習を業務システムに取り入れるか」を考えるような日常的で現実的な技術だ。

シンギュラリティと関係ありそうなのは「強いAI」の方で、2001年宇宙の旅に登場するHALや、ターミネーターに登場するスカイネットのように自我と意識を持ち、自立的に思考するAIが「強いAI」と呼ばれる。

こちらの技術的な実現可能性は今のところない。

先に説明したように自我や意識とは何なのか、脳科学の世界でも心理学の世界でも良く分かっていないのに、自我意識を持つAIなど作れるわけがない。

「強いAI」は今のところファンタジーでSF作家だけが考えていれば良い代物だ。

今考えるべきはシンギュラリティとは縁のない「弱いAI」である。

「弱いAI」は結構人の仕事を代替できてしまう。

しかし何でもできるわけでは無い。

「ムーアの法則」は限界を迎えつつある


初期のシンギュラリティの根拠になっていた「ムーアの法則」はそろそろ限界を迎えつつある。



プロセッサの性能は18ヶ月で2倍になってきたわけだが、どのように性能を増加しているかと言えば、「回路を小さく作る」ことで高速化と集積度の向上を実現している。

半導体プロセッサはシリコン基板の上に電子回路を印刷することで製造する。
この電子回路は回線が細くなれば細くなるほど狭い領域に電子回路を詰め込むことが出来る。
つまり集積度を上げることが出来る。
集積度を上げると回路と回路の距離が近くなるので演算処理が早くなる。
また、狭い領域に沢山の回路を詰め込めるので一度に沢山の演算が出来る。
回路の数を増やす。
回路と回路の距離を短くして早くする。
という二つの理由で集積度を高めてきたのだ。

しかし、そろそろ回線の細さがこれ以上細くできない限界を迎えつつある。

最初の限界は「熱」だった。
回線を流れる電流が電気抵抗によって発する熱で焼き切れてしまうことを防げなくなった。
ただこれは回路を並列化し回路の使用頻度を減らすことで回避できた。

しかし次の限界は乗り越えられそうにない。

そろそろ回線の細さが原子の大きさまで細くなりそうだからだ。
回線は物理的に原子の直径より細く作ることはできない。
後数年でそのレベルに到達するそうだ。

既に回線を細くすることは限界を迎えているようで、先の記事にあるように「もはやムーアの法則は有効ではない」という声がプロセッサメイカーから出てきている。

少なくともこれまでの集積度を向上させるやり方で、プロセッサを高性能化する方法は使えなくなる。

実際、最近はCPUの速度があまり速くなっていない。
PCの高速化はストレージのSSD化やメモリの高速化による面が大きい。

シンギュラリティの根拠の一つであった「ムーアの法則」はそろそろ限界を迎えつつあり、シンギュラリティが何時起きるか定かでなくなった。


技術的特異点というものは明確に定義できない


「ムーアの法則」は成立しなくなるが、他の技術が登場している。

量子コンピュータも存在するし、プロセッサの三次元化という試みもあるらしい。
プロセッサの集積度を向上させる以外の方法でプロセッサの性能向上は続くと思う。

しかし、これだけ多様な技術の発達の仕方をすると、それだけ未来予想のパラメータが多くなりすぎて、予想が困難になる。

これだけ技術のパラメータが多いと数年先も予想できない。
技術的特異点なんてものを定義できるわけがない。

人間が人間を理解するまで人間を超えるAIは開発できない


人間の知能を超え、 自我意識を持ち、 自己判断で行動し、 自らをアップデートしていく、 人間の予想を超える人工知能を、人間が作る為には、最低限次のことが出来なければならない。

・人間の脳機能を全て解明する
・自我や意識とは何か解明する
・創造性とは何か解明する
・人工的な自我や意識を開発する
・人間の知能より高い知能を持つ機械を開発する
・人工的な創造性を持つ機械を開発する
・単独で行動できる身体を開発する
・自ら創造性を持ちアップデートする機械を開発する

2045年までにこれらが出来るか考えてみて欲しい。

私は最初の二つですら達成できないと思う。


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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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