経産省はSIer業界の問題を把握している

2019年4月14日日曜日

DX システム開発 システム業界問題 政治

t f B! P L


「DXを実行する上での現状と課題」コピー


経済産業省は現在、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)というSIer業界とそのユーザー企業全般にわたる「業界改革」に取り組んでいる。
これによってSIer業界を中心としたIT業界の体制や働き方や雇用や契約形態が変わってくる可能性が高い。
そのDXについて何回かに分けて非情技(非ITエンジニア)向けに私なりの解説をする。

IT業界(SIer業界)が改革を必要とする理由と改革案が以下の経産省のサイトで公開されている。



以下は「DXレポート」から引用したSIer業界とユーザー企業の抱える問題である。

引用、


DXを実行する上での現状と課題

既存システムのブラックボックス状態を解消できない場合 
① データを活用しきれず、DXを実現できず 
② 今後、維持管理費が高騰し、技術的負債が増大 
③ 保守運用者の不足等で、セキュリティリスク等が高まる DXを本格的に展開するため、DXの基盤となる、変化に追従できるITシステ ムとすべく、既存システムの刷新が必要

しかしながら

A) 既存システムの問題点を把握し、いかに克服していくか、経営層が描き切れ ていないおそれ 

B) 既存システム刷新に際し、各関係者が果たすべき役割を担えていないおそれ
 • 経営トップ自らの強いコミットがない(→現場の抵抗を抑えられない)
 • 情報システム部門がベンダーの提案を鵜呑みにしがち
 • 事業部門はオーナーシップをとらず、できたものに不満を言う 

C) 既存システムの刷新は、長期間にわたり、大きなコストがかかり、経営者に とってはリスクもあり 

D) ユーザ企業とベンダー企業の新たな関係の構築が必要 
• ベンダー企業に丸投げとなり、責任はベンダー企業が負うケースが多い 
• 要件定義が不明確で、契約上のトラブルにもなりやすい 
• DXの取組を経て、ユーザ企業、ベンダー企業のあるべき姿が変化 
• アジャイル開発等、これまでの契約モデルで対応しきれないものあり 

E) DX人材の不足 • ユーザ企業で、ITで何ができるかを理解できる人材等が不足 
• ベンダー企業でも、既存システムの維持・保守に人員・資金が割かれ、クラウド 上のアプリ開発等の競争領域にシフトしきれていない


以下の資料から抜粋した。


ユーザー企業からITベンダー(SIer)への丸投げ体質

以前からこのブログでも書いてきたが、SIer業界では大手から小口案件まで、ユーザー企業(発注元)がシステム開発に非協力的で、本来は発注元の仕事まで全てITベンダー(受託社)に「丸投げ」にすることが慣習になっている。
業務システム開発にはIT(情報技術)知識だけではなく、業務の知識も必要で、本来は業務担当者とITエンジニアの共同作業で開発を行わなければならない。
しかし発注元企業は通常、業務担当者を開発に参加させない上に、経営サイドは業務担当者に100%業務の仕事を与えたままにする。
結果として、業務担当者は業務システム開発に協力する暇がなくなり、担当SEが業務を把握しなければシステムを開発できない状態になる。
業務の専門家は業務担当者なのだから業務担当者がシステム開発に参画したほうが手っ取り早く効率も良いのだが、SEが業務を覚えてシステムを開発するという無駄なことをやっている。
その負担の分だけSEはIT知識の習得リソースを削がれて技術が劣化する。

資料を見れば経産省もこの状況を把握しているのが分かる。

要件定義が不明瞭(発注者責任の不在)

要件定義書は本来は発注元が書くものだ。
しかし長い間業務システム開発では要件定義書をSIerに書かせてきた。
要件定義書は「何を依頼するか」を定義したものだが、それを受注者に書かせると言うことは「私は何を貴方に依頼したいのか分かりません」と言うことだ。
通常このような状態の場合はITコンサルタントを雇って指導してもらうものだが、SIer業界では相談や提案は「無料」で提供され受託開発でその費用を回収するのが慣習化している。
悪質なユーザー企業の中にはこの慣習を悪用して無料で相談と提案をSIerにやらせて、提案されたシステム案を中国など安い受託開発業者に発注してSIerに金を払わないケースも頻繁に起きている。
それも20年以上も昔からである。
こうなると「要件定義が不明瞭」なんて次元の問題ではない。

請負契約では仕様変更に対応できない

請負契約というのは最初に発注元が要件定義を凍結して、その要件定義書を基に受託者が見積もりを出し、発注元が見積もり金額と納期に納得したら、受託契約が成立する契約だ。
受託者には要件定義を満たす責任がある。
請負契約では最初に要件定義書でシステムの仕様を定めることになるため、途中で仕様変更ができない。
一方、ビジネス側では最初に市場にサービスを投入してから、市場の反応をフィードバックしてサービスの内容を変更する。
俗に言うPDCAサイクルを回す必要がある。
このPDCAサイクルは請負契約に適さない。
1サイクルごとに請負契約を交わさなければならない。
1サイクルが2週間など短期間になると請負契約ではとても対応出来ない。

ユーザー企業にITを理解できる人材が不足

日本のユーザー企業では長い間ソフトウェアを軽視してきた。
その結果としてユーザー企業では業務システムやそれを社内で管理するIT部門が社内で軽視され経費削減の対象となり、システム開発業務をSIerへ丸投げするようになった。
IT部門にはIT人材が不在となり、ユーザー企業にITを理解できる人材が不足する状況になっている。
はっきり言って自業自得である。

ITベンダーは古いシステムの保守に追われ最新技術にシフト困難

ユーザー企業では長い間ソフトウェアを軽視してきた結果として、システムの更新が十分に行われず、古い機械や古い技術で作られた業務システムが何時までも使われることになる。
古い機械や古い技術は生産性も悪くメンテにもコストと時間がかかる。
結果、SIerなど受託者は古い機械や古い技術の維持と保守に追われることになる。
自社の人材に最新技術を習得させることもできず、将来性のない古い技術による保守業務に追われ、古いシステムが刷新されたら、保守人材はお払い箱という未来のない状況になっている。

一方で最新技術を持つIT人材が不足し、もう一方で古い技術を維持してきた保守人材が捨てられているのである。
自社の人材に最新技術を習得させればこんなことにはならないのだが、出来ていないのだ。
その原因はユーザー企業の抱える古いシステムの保守が、一社だけではない社会的負担になっているからである。

IT人材不足と活用・確保に関する資料



この資料はIT人材の偏在や給与・残業、雇用形態などに関する調査の資料である。
IT人材不足の状況と現在のIT人材の待遇に関するレポートが纏められている。
資料が非常に多いのでこのブログ議事で全体を取り上げることはできない。
詳しいことは別記事で書く。

このレポートの中に以下の資料がある。


ここに現在のITエンジニアの雇用形態の問題であるSESに関連する問題の指摘がある。
該当部分を引用する。

引用、


(4) IT 関連産業構造による IT 人材の問題

 ソフトウェアや情報システム開発の特殊性は IT 人材の問題に強い影響を与えてきた。 ソフトウェアエンジニアリングの不在も含めソフトウェアや情報システム開発事業が、 労働集約的かつ人海戦術的な側面を持つ点、景気変動等により情報システムの開発自体 に要する IT 人材の必要性が変則的(需要が一定ではない)な点、さらに IT 関連産業に おける業務の階層化が、IT 人材需要を不規則なものにしている。個別の業務において変 動要因の大きい IT 人材需要を IT 人材の長時間労働や人材派遣あるいはそれに類する業 務により吸収するケースなどの業務形態や雇用慣行等が IT 人材に係る問題となり、「長 時間残業、35 歳定年説」などの問題が指摘された一因にもなった。IT 人材派遣について、 政府では、「労働者派遣法」において二重派遣の禁止、使用者責任の明確化を指向し、雇 用慣行の改善を図っている。また、派遣及び派遣的形態によるソフトウェア開発は、労働環境の問題と同時に、成果物の品質責任を問われることなく労働時間が対価になる傾 向を持つため、IT 人材のソフトウェアの生産性や品質の追求や派遣元企業の技術者育成に対するインセンティブを妨げ IT 人材の質的向上を妨げる原因の一つと指摘されてい る。この問題に対する解決策として、下請けガイドラインや契約形態等の是正等より IT 関連産業のビジネス慣行の変革が求められている。


「IT 人材派遣について、 政府では、「労働者派遣法」において二重派遣の禁止、使用者責任の明確化を指向し、雇用慣行の改善を図っている。」

「二重派遣」「使用者責任の明確化」「雇用慣行の改善を図っている」などは「偽装請負」が恒常化していることを認識していることが窺える。

SNSなどでSIer業者の元請けに近い会社所属の人間による、「SIer正当化」「多重請負正当化」「SES正当化」をゴリ押しするような発信が相次いでいるが、経産省の資料を読む限り、経産省はこれらも問題を正当と見なす認識にはなく、改善の必要な「問題点」として認識していることが分かる。

少なくともSIer元請け事業者やSES事業者の認識と、経産省の認識は異なるのが分かると思う。

では次に、経産省が現在のSIer業界がこれらの問題を解消しなければ、どのような社会的問題が起きると認識しているのか、将来予測の資料を次回の記事で紹介する。


このブログを検索

Translate

人気の投稿

自己紹介

自分の写真
オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

QooQ