信用創造についての誤解とMMTとリフレ派

2019年4月10日水曜日

経済政策

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以前の記事で紹介したようにリフレ派の経済学者の方々はMMTに大して冷笑的である。

MMTが「主流派経済学」批判の根拠としている論理に、主流派経済学者の「貨幣と信用創造に対する誤解」というものがある。

MMT支持者達の「貨幣と信用創造」の説明はいくつかあるが、ケインズ派(土建派)の評論家の中野剛志氏の説明が分かりやすいので以下に紹介する。


引用、


「通貨」のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が占める割合は、ごくわずかである。
ここまでは、主流派経済学でも異論はないであろう。
問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出しとの関係である。
通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集めて、それを貸し出しているものと思われている。

しかし、これは銀行実務の実態とは異なる。
実際には、銀行の預金が貸し出されるのではなく、その反対に、銀行が貸し出しを行うことによって預金が生まれているのである(これを「信用創造」という)。
驚かれたかもしれないが、これは事実である。

銀行の貸し出し増加が中央銀行の準備預金を増やす

例えば、A銀行がα企業に1000万円を貸し出すとする。
この場合、A銀行は手元にある1000万円を貸すのではない。
A銀行は、単に、α企業の銀行口座に1000万円と記帳するだけである。
いわば、銀行員が万年筆で記帳するだけで1000万円という通貨が生まれるというわけだ。それゆえ、預金通貨のことを「万年筆マネー」と呼ぶ者もいる。
このように、銀行とは、通貨を創造するという機能を持つ特別な制度なのである。
銀行は預金を元手に貸し出しを行うのではなく、その反対に、銀行による貸し出しが預金を生む。
それゆえ、原理的には、銀行は、返済能力のある借り手さえいれば、資金の制約を受けずに、いくらでも貸出しを行うことができてしまう。


この説明だけ聞くと「(主流派)経済学者というものは皆、貨幣や信用創造というものを誤解して認識しているのか」と考えてしまうと思う。
しかしそれは誤りである。

少なくとも「リフレ派」と呼ばれる経済学者の方々は貨幣と信用創造を正しく認識している。
その参考例として、何度も紹介しているリフレ派のマクロ経済学者の井上智洋氏の著書「AI時代の新・ベーシックインカム論 (光文社新書)」から信用創造の説明を引用して紹介する。

許可を貰っていないので著者や出版社から警告受けたら即削除する。

引用、


近代以前では洋の東西を問わず、主要な地域では「政府中心の貨幣制度」(Aレジーム)が採用されており、多くの場合、それは金属貨幣レジームであった。
<中略>
近代以降の貨幣制度である「銀行中心の貨幣制度」(Bレジーム)は、18世紀のイングランドで現代と同様の仕組みを形作った。近代的な銀行の期限は一般に、イングランドの「ゴールドスミス・バンク」にあるといわれている。
<中略>

銀行中心の貨幣制度の特徴

 Bレジームは、「信用創造」によってマネーストックを増大させられるので、金属貨幣に基づくAレジームに比べれば、貨幣不足によるデフレーションを起こしにくい。
 「信用創造」は、民間銀行がお金を作る仕組みである。銀行が貸し出しを行う際に、預金通貨というお金が新しく作られるのである。
例えば<中略>、世の中にAさんとCさんしかおらず、Aさんは100万円持っていて、Cさんは最初お金を一円も持っていないものとする。

 次に、AさんがB銀行に100万円を預金する。
B銀行はそのうちの10万円を金庫にしまっておいて、残りの90万円をCさんに貸し出した。
この時、世の中にはなんと190万円のお金が存在することになる。
 なぜなら、Aさんは100万円の預金を持っていると思っているし、Cさんは90万円の現金を保有しているからである。
 もっといってしまうと、B銀行はいきなりCさんに5000万円を貸し出すこともできる。なぜなら、CさんがB銀行に保有する口座に5000万円と書き込めば良いからである。
 この場合、いきなり5000万円の預金貨幣が創造され、世の中に出回っているお金「マネーストック」が増大したことになる。



この本が出版されたのは2018年4月である。
それ以前にも井上智洋氏は何冊も著書を出版している。

少なくともMMTが日本で話題になる前から「貨幣と信用創造」について正しい説明をしていたわけだ。

MMT支持者達は、MMTについて何か画期的で新しい考え方のように説明しているが、私は新しいとは思えない。

紹介した井上智洋氏の説明を読んでも分かるようにリフレ派は以前から常識として「貨幣と信用創造」について正しい説明をしていた。

私は最近のMMT支持の風潮に「欺瞞」のようなものを感じる。
特に目新しいとは思えないものを画期的な思想のように宣伝して回ることは誠実な態度と思えないからだ。

以前の記事でも書いたがMMTはアメリカで話題になっていて目立つので「客寄せパンダ」として利用されているだけだと思う。

アメリカでなぜMMTが話題に上ったのかは分からない。

MMTの説明は間違ってはいない。

しかしその説明は以前からリフレ派やケインズ派によって行われてきた説明と大して違うものではない。

MMTの支持者に対しては若干の警戒が必要かもしれない。


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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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