レイヤーという思考の道具(社会システムの理解に応用する)

2019年3月27日水曜日

経済政策 思考具 政治

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「レイヤーという思考の道具(ネットワークレイヤーの紹介)」でTCP/IPの解説により「レイヤー思考」という、複雑な仕組みを簡潔に整理する方法を紹介した。

この「レイヤー思考」で社会を捉えると、社会システムがかなりわかりやすくなる。

その考え方を紹介したいと思う。

日本の国体

日本は俗説もあるが大体二千年続いた世界でもっとも古い国家であり、その二千年の間ずっと天皇の元で統治されてきたのは事実だ。
左派もこの事実は否定しないだろう。

総理大臣や閣僚は天皇によって任命され、憲法も大日本帝国憲法のころに明治天皇によって発布されている。
現在の日本国憲法は大日本帝国憲法を改正した憲法なので、憲法としては連続性がある。
日本国憲法は公布されたが発布されていない。
発布は大日本帝国憲法のころに済ませたからだ。
従って日本においては天皇が統治形態の土台の役割を現在も担っていると考えるべきだろう。

この統治形態をレイヤーで表すと以下のようになる。

3層
国民生活・企業
2層
近代国家(民主主義・憲法・法律)
1層
古代国家
(天皇・日本語・伝統慣習法・神道・日本仏教)

レイヤー1は天皇を中心とした古代国家のレイヤーである。
レイヤー2が法治国家である近代国家のレイヤーである。
近代国家のレイヤー上で我々国民が生活している。

国民は近代国家に従属し、近代国家は古代国家に従属している。
従属するとは「規格に従う」という意味だ。
国民は近代国家の法律に従い、近代国家は古代国家の慣習法に従っている。

日本は、二千年の歴史の中で何度もレイヤー2の統治者を変更してきた。
豪族が統治していた時代、貴族が統治していた時代、武士が統治していた時代、そして現在の近代国家が統治する時代である。
階層構造になっているから二千年も続いたのだろう。
レイヤー1は変わっていないのだから。
「君臨すれども統治せず」でレイヤー1(古代国家)が執行権を持たず、レイヤー2が執行権を持ち、権力者としての責任を担うから、レイヤー1(古代国家)が革命などで破壊されずに済むのだ。
合理的な仕組みだと思う。

これなら将来「人工知能民主主義」のようなものが登場しても、レイヤー2を入れ替えることで、簡単に統治形態を変更できる。

レイヤーで分けて考えるとすっきりと日本の国体を理解できる。

国家と経済のレイヤー構造

国家経済の視点から社会をレイヤーに分けて考えると以下のようになると思う。

4層
国民生活と家計
3層
産業社会と企業 - ミクロ経済・経営学・会計
2層
市場メカニズム(通貨・国債・総供給・有効需要)
 - マクロ経済
1層
国家と政府(中央銀行・財政政策)

経済の基本的枠組みは「国家」であり、
経済の土台は政府による金融政策と財政政策によって調整された市場メカニズムによって支えられている。
自由貿易やグローバル経済などは、それぞれの国家が結びついたものであり、一部のネオリベが主張するように「グローバル化によって国家が必要なくなった」わけではない。
各国の責任の元で調整された市場があるからこそグローバル市場が成り立つのだ。
国家が無くなれば市場も壊れて無くなる。

レイヤー2の市場はレイヤー1の政府と中央銀行に従属している。
金融政策と財政政策の結果としてインフレ率や有効需要の量が決まる。
市場は政府と中央銀行に従属していると言える。

レイヤー3の企業はレイヤー2の市場に従属している。

そしてレイヤー4の家計は企業に従属している。
消費の側面から見ると企業が家計に依存しているようにも見えるが、「従属」は「規格に従う」ことを意味するので、商品企画などで企業が決めた商品を消費者は購入するので、やはり家計が企業に従属していると言える。
もちろん消費者はニーズを企業に伝えることも出来るので支配されているわけではない。

企業経営者によく「経営と経済の区別が付かない」人がいるが、レイヤー3の産業社会の価値観が経済の全てだと勘違いしているのだろう。
レイヤー2の市場の存在を忘れているのではないだろうか。

通貨と債務のレイヤー構造

貨幣は「債務」である。
円は日銀の債務であり債券である。
しかし経済主体(政府・企業・家計・海外)の債務と債権について考える時に、「通貨が中央銀行の債務である」と認識すると「日本の全ての資産と負債は日銀の債務」ということになってしまい訳が分からなくなる。
そこでマクロ的な債務と債権について考える時は、以下のように債務と債権を2階層のレイヤーに分けて考えると良いと思う。

2層
経済主体の債務と債権(政府・企業・家計・海外)
1層
日銀の通貨・準備金(日銀当座預金)

経済主体(政府・企業・家計・海外)の債務と債権は全て、日銀の通貨という債務によりその量を測定している。
通貨は価値の物差しであり、経済主体の債務と債権の量を考える時は、通貨は純粋な「道具」として考えるべきだ。
そこで両者をレイヤーで分けて考えることを推奨したい。
レイヤー2で債務について考えるとき、レイヤー1のことは忘れるのがルールだ。
ちなみに国債はレイヤー2である。
準備金(日銀当座預金)はレイヤー1である。
両者を混同しない方が良い。

公共事業とインフラ産業と民間企業のレイヤー構造

これはリフレ派の人々の嫌いな「三橋」氏の産業論である。
三橋氏は「移民」「水道民営化」「種子法廃止」「雇用の人口動態説」などでかなりの虚偽を吹聴していて、リテラシーの高い層からはかなり批判されている。
私も上記の話は全く信用していない。
「入管法改正」は外国人労働者の流入規制の強化だ。
水道は民営化しない、経営の一部だけ民間に委託できるようになるだけだ。
「種子法廃止」で日本の種子は失われない。
雇用が増えたのは金融緩和の結果と考えるのが自然だろう。

ただ、以前も言ったように彼の所属する「土建派(ケインズ派)」言論人は公共事業とインフラ産業の重要性と財政出動の必要性の説明に限っては、正当な主張をしていると考えている。
リフレ派も財政出動の必要性は否定していないし、国債発行額は増額すべきと主張している。
「土建派(ケインズ派)」の主張は「社会主義的すぎる」と批判されることが多く、私も若干その傾向はあると思う。

しかし、先の3つの大地震と西日本豪雨などを体験し、公共投資やインフラの整備が必要なのは自明で有りこの点はリフレ派も否定しないと思う。

三橋氏は産業を以下のように、公共性の高さごとに5つのレイヤーに分けて説明している。

5層
国民生活・一般の市場経済
4層
一般産業
3層
産業的インフラ(食料・医療・教育・防衛・土建など)
2層
インフラストラクチャー(道路交通網・ライフラインなど)
1層
国土

高位(上層)ほど市場性が高く、低位(下層)ほど採算ベースに乗り難く、市場メカニズムだけに任せるのが難しくなる。
よって、低位レイヤーほど公的資金の注入の必要性が高くなり、市場性が薄くなる。
また、低位レイヤーほど関税や規制などで国内産業の保護を必要とする。

世間では構造改革規制緩和の声の元、全ての規制を廃し市場メカニズムによる効率化を進めようという声が活発になっている。

彼は、これに対する反論として「産業のレイヤー」を描き、規制緩和に反対している。

私は先に言ったように「土建派(ケインズ派)」の主張は公共投資を土建に拘りすぎているのと、やや社会主義的な面があるので、必ずしも肯定しないが、この「産業のレイヤー」による「公共投資とインフラ産業の重要性の説明」は、正直「上手い説明」だなと思った。

これなら産業のどの部分に「規制緩和で市場性を持ち込み」どの部分に「公的資金を注入して規制で守る」べきなのか考えやすくなる。
高位レイヤーは規制緩和で市場性を拡大し、低位レイヤーほど規制や関税などで産業を保護し、公的資金を注入すべきなのだ。
どの程度にそれをやるかは議論が分かれると思うが、この「産業のレイヤー」は思考の道具として使いやすい。
公共事業やインフラ産業について考えるのに便利だ。
どの産業をどのレイヤーに入れるか考える形で議論すれば良いのではないか?

イデオロギーやリフレ派・ケインズ派といった政治的立場は抜きにして、この「産業のレイヤー」のような分かりやすい「プレゼン手法」は見習いたいと思った。
三橋氏は経営コンサルだそうだから、プレゼンは上手いのだろう。

あくまで上手な「プレゼン手法」として紹介した。

三橋氏の経済政治政策を支持しているわけではない。

ちなみにこの考え方は以下の著書に記載されている。


興味のある人は読めば良い。嫌いなら無理には勧めない。


BIと公的扶助のレイヤー

マクロ経済学者の井上智洋氏の唱えるBI(ベーシックインカム)をレイヤー構造で描いてみた。

3層
一般社会保障と公的扶助(生活保護・年金など)
 - BIを控除して支給
2層
金融BI(金融政策・通貨発行益を財源とする) - 可変金額
1層
財政BI(税と国債発行を財源とする) - 固定金額

井上智洋BIではBIは二階建て構造になる。

レイヤー1では税と国債発行を財源とする、定額のBIを国民に支給する。
月額1万円から初めて、最終的に7万円にするそうだ。

インフレターゲット政策として通貨発行が必要になるが、その際「通貨発行益」が生じる。
レイヤー2ではこの「通貨発行益」をBIとして国民に分配する。
「通貨発行益」が50兆円なら、一人あたり年間40万円弱ぐらいだろう。
インフレ率によって適切な通貨発行量は変わってくるので、レイヤー2の金融BIは金額が可変になる。
「通貨発行益」が少ない場合に人によってはBIだけでは公的扶助が不足する場合がある、その穴を埋めるためにレイヤー3の公的扶助がある。
レイヤー3の公的扶助は必要金額からBIの金額を控除した金額を支給する。

これならばBI導入によって公的扶助の不足による被害は防げる。

井上智洋BIは構造が複雑で分かりにくいので理解するためにレイヤーの知識は不可欠だと思う。

井上智洋BIは以下の著書で解説されている。
「読め!」



レイヤー思考で上手にプレゼンを進めてください

以上説明してきたように「レイヤー」という考え方を使うと、社会の複雑な仕組みや考え方を単純に分かりやすく説明出来る。

今まで説明してきた、政策や社会認識には反発を感じる人達も多いだろう。
左派は日本の国体を受け入れたくないだろう。
経営者は国家と経済のレイヤーを受け入れたくないだろう。
リフレ派は三橋氏の「産業のレイヤー」を受け入れたくないだろう。
BIの嫌いな人は井上智洋BIを受け入れたくないだろう。

この記事はそれぞれの政策を推奨しているわけではなく、社会システムの考え方と整理説明の方法を提案しているだけであり、紹介した政策をお進めしているわけではない。

純粋に思考の道具(フレームワーク)として受け止めて欲しい。

レイヤー思考で上手に貴方のプレゼンの完成度を高められることが出来れば幸いです。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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