ネオリベ型BIとリフレ型BI

2019年3月5日火曜日

経済政策

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経済の話でしばらく前からBI(ベーシックインカム)のことが話題に上る。
しかしSNSなどで語られるBIの話はBIのことをかなり誤解していることが多い。
また、BIにはその財源論を巡って大きく二つのBI案が存在しており、両者を区別しなければBIの議論が空回りしてしまう。
両者を区別した議論は殆ど見当たらない。
つまり世間のBI論は殆どその内容を理解しない空回りの議論しか行われていないということだ。
そこで二つのBI案の違いを説明したいと思う。

デフレとは何か

BIの話に入る前にデフレとは何かということを知っておく必要がある。

デフレというモノを一言で言えば「一に通貨不足、二に需要不足」と言える。

需要と供給のバランス

供給とはモノやサービスを生産し消費者に提供することだ。
需要というのはモノやサービスが欲しいという消費者の必要と欲望のことだ。
特にお金の裏付けのある消費者の必要と欲望のことを有効需要と呼ぶ。

国全体の総供給と総有効需要を全て金額で換算したとき、供給額と有効需要額のバランスが供給過剰であればデフレになり需要過剰であればインフレになる。

靴の生産と消費で成り立つ村を想像してみよう。

靴村では年間100足の靴を消費(必要と)する。
靴村では年間100足の靴を生産する必要がある。
外から靴は輸入できないとする。

もし80足しか生産できなければ20足の靴が不足し、靴の価格は上昇する。
この状態がインフレである。

もし120足生産すると20足の靴が余り、売れない。
余った20足の靴を作った靴屋は損失を受けることになる。
そして靴が余っているので靴の価格は下がってしまう。
それによって更に靴屋の利益は減る。
この状態がデフレである。

靴の生産量は多すぎても少なすぎても良くない。
少し不足するぐらいが良く、95足ぐらい作るのが良い。
少しインフレの方が毎年少しずつ価格が上がり売上が上昇するからだ。

供給と通貨量のバランス

デフレを考える上でもう一つ重要なのは取引に使用する通貨(貨幣)の量である。
需要と供給のバランスが取れていても取引や消費は全て通貨とモノの交換によって行われる。
取引に使用される通貨の絶対数が不足すると取引が行えなくなる。
(正確には通貨の価値が高騰するのだが話が複雑になるので省略する)
靴一足1万円なら毎年100万円の通貨が使用可能な状態になければならない。
通貨は預金にも使われるから、毎年通貨は一部が預金に回り取引に使われる通貨が減っていく。
だから毎年新規通貨を発行して取引に使用できる通貨が100万以上存在する様に通貨量を調節しなければならない。
通貨が不足した状態がデフレであり、通貨が余っている状態がインフレである。
通貨が不足すると通貨の価値が高騰し、物価が下がる。
通貨が余ると通貨の価値が下落し、物価が上がる。

デフレとインフレというのは単純なものなのだ。

ポイントは通貨量と供給量と有効需要量の大きさだ。
ちなみに通貨量に預金は含まない。
預金は通貨の価値に影響しないからだ。
取引に使われる通貨の量が重要なのだ。

テクノロジーが進歩すれば総供給量は増える、それも急速に

人類のテクノロジーが進歩するほど生産量は増えていく。
食料の生産に携わる人々は、中世なら国民の80%ほどが食料生産していたが、現在では5%ほどで国民が必要な食料を生産できる。
工業社会になって初期の頃は70%程の人々が製造業で働いていたが、現在は25%ほどで国民が必要な工業製品を生産できる。
(日本は輸出するので実際はもっと少なくて良い)

テクノロジーが進歩すればモノの生産量は増加する。
中世には自動車も鉄道もパソコンも存在しなかったが今は大量に生産している。
金額ベースで食料の総価格と比較すれば、何十倍何百倍の総価格の工業製品を生産している。
総供給が増え、経済全体の規模が増えているのが分かると思う。
この総供給の増加は今後も続く。
おそらく現在の工業製品とは異なる新しいモノが生まれて生産の主役になるだろう。
それはソフトウェアかも知れないしコンテンツかもしれない、何かはわからない。

ロボットやAIの発達で生産性は拡大する

最近は良くAIの発達で将来仕事が無くなると言われる。
現在、人間が行っていた生産活動や仕事は機械に置き換わってしまうだろうと言われている。
実際、これまでも機械は人間の仕事を奪っていった。
昔は電話をかけるときは交換手に連絡して相手の電話に回線を接続してもらわなければならなかったが、その後電話番号を電話機に入力して自動で繋がるようになって、交換手は必要無くなった。
昔は生活の場にブリキや木製の加工品が多数使われていた。
洗面器やバケツは金属製だった。
洗濯挟みや俎板は木製だった。
しかし今は殆どがプラスチック製になっている。
ブリキや木製の加工を行っていた職人は失職していることになる。
プラスチック製品の加工は型に流し込んで固めるだけなのでほぼ自動だろう。

このようにこれまでも技術の進歩で沢山の仕事はなくなり、無くなることにより生産性が向上して生産量も増えてきたわけだ。

技術の進歩は国全体の生産量を増加する

昔は家電製品の保有量は少なかった。
テレビが家族に一台、洗濯機、冷蔵庫ぐらいだ。
私が子供の頃は、電子レンジ、レコードプレイヤーといった所だ。

その後、AV(オーデオビジュアル)機器が発達して、ウォークマン、ラジカセ・オーデオコンポ、VTRと増えていった。
他にもエアコン、IH、食洗機、電気湯沸かし器、とそれまで使わなかった製品を購入するようになった。

生産量が拡大しているのだ。

これからも生産量の拡大は続く。

今後はロボット掃除機や自動調理器、など新しい製品が登場するし、社会全体で今まで使わなかったモノを使うようになるだろう。
小型飛行機で通勤するかも知れないし、在宅勤務で自宅に仕事用の機材を設置するかもしれない。
その場合、住宅も広いものが必要になるだろう。
必要なモノは増え続けるのだ。

技術の進歩は拡大している

これは説明するまでも無いと思う。
スマホの進歩を見れば分かると思う。
技術の進歩の速度が加速するということは、生産量の拡大も加速するということだ。

総供給が増えると通貨と有効需要が不足する

「デフレとは何か」の説明で、デフレを理解するには通貨量と供給量と有効需要量のバランスが大事だということは述べたと思う。

技術が進歩すれば、生産性が上がり(金額ベースで)総供給量が増える。
総供給量が増えれば、有効需要量もそれに合わせて増加しなければならない。

通貨量も総供給量に合わせて増やさなければならない。

有効需要量を増やすには消費者にお金(所得)を分配しなければならない。

通貨量を増やすには通貨を刷って発行しなければならない。

総供給量が増えているのに、有効需要量と通貨量を増やさなければデフレ不況になる。

何故BIが必要になるのか

テクノロジーの進歩により総供給量が増えるのなら、それに合わせて有効需要量を増やさなければならない。

通貨量も増やさなければならないが、これは刷って発行すれば良いだけなので簡単だ。
インフレ率が2%から4%程度になるように通貨発行量を調節すれば良い。
総供給量は増えることはあっても減ることは無い。
核戦争でも起きない限り。

有効需要量を増やすには様々な手段があるが最終的には「消費者にお金を分配する」ことが必要だ。
総供給量は世界の誰かが技術を進歩させ全ての人々がそれを使えるので、極端に言えば「普通の人は寝ていても総供給は増加する」のが実状だ。
「勤勉の美徳」の時代ではないのだ。
難しいのは有効需要を増加することだ。

これまでの日本では公共事業が所得の分配に使われてきた。
民間では採算に乗らない赤字事業を国家が行い、その事業を通じて賃金給与の形でお金を分配するのだ。
これにより不足する有効需要を補っていた。
公共事業は今でも有効なのでこれからも実施すべきなのだが、公共事業だけでは不足する有効需要を補えなくなってきている。
他の「お金を分配する手段」が必要になる。

今やるべきは減税と教育無償化だが、これでもテクノロジーの進歩により総供給量が増加する社会では不十分だ。

そこで一番確実な手段として消費者に直接「お金」を配ってしまうという方法が良いわけだ。
これならテクノロジーの進歩によりどんなに総供給量が急上昇しても、その分「お金」を配ってしまえば有効需要を増加できる。
「公共事業か減税か、教育無償化か、福祉増加か防衛力拡大か?」など通常の所得分配の方法だと手段を考え選択しなければならないが、「お金」を配るだけなら何も考えず、配る金額だけ考えれば良い。
単純なので有効需要の調節がやり易い。

技術の進歩が加速度的に増している現代と将来には、より効率良く素早く確実に有効需要を拡大する手段が必要で、その有力な候補がBIなのだ。

BIはデフレ対策と密接な関係にある

現在のデフレ対策にもBIは有効だ。
私なら日銀が新規発行した通貨の内、新規国債購入31兆円に使用した残りの49兆円をBIの財源として消費者(国民)に分配する。
リフレ派の中には同じような主張をしている人もいる。

これを実施すれば有効需要の拡大と金融緩和を同時に実施できるので、一石二鳥だ。
しかもインフレ率は直ぐに上昇するだろう。

恒常的デフレ対策にはBIが必須だ

今後、技術の進歩により総供給は加速度的に増えるのだから、通貨量と有効需要を簡単に増加できるBIは必須だと思う。
これは社会保障制度とは別次元の話である。
健全な経済成長を恒常的に持続する為にBIが必要だと言っている。

通貨発行益(貨幣発行益)とは

通貨発行益とは通貨を刷って発行したことで政府と中央銀行が得る利益のことだ。
紙幣一枚を刷るのに28円ほどかかるので、千円発行すれば972円、一万円発行すれば9972円の利益を政府と日銀が得る。
この利益は政府の予算に使える。
毎年80兆円の通貨を発行するなら最大80兆円の通貨発行益を政府の予算に使えることになる。

中央銀行が政府から分離している場合は、中央銀行が通貨発行益を得るので、政府は国債を発行して通貨発行益を回収しなければならない。
国債は元々は民間からの借入の手段として存在するものであり、通貨発行益を回収する道具ではないのだが、現在はもっぱら通貨発行益の回収に使われている。
通貨発行益の回収に使った国債は政府の所有する日銀が回収するのでこれは返済する必要がない。
民間から借入した分だけ返済すれば良いのだ。
さらに言えば民間も資産運用にある程度国債を必要としており、その分は返済を求められないので返済する必要は無い。
一部の国債は通貨として機能しているのだ。
しかし財政法4条と特別会計法42条は国債の全額返済を義務づけているので、今の政府は国債発行を停滞させている。
法改正が必要だ。

間違いやすい、日銀の通貨発行益と統合政府の通貨発行益の違い

日銀では通貨発行益を次のように説明している。

Q:日本銀行の利益はどのように発生しますか? 通貨発行益とは何ですか?
A:日本銀行の利益の大部分は、銀行券(日本銀行にとっては無利子の負債)の発行と引き換えに保有する有利子の資産(国債、貸出金等)から発生する利息収入で、こうした利益は、通貨発行益と呼ばれます。

日銀では「国債、貸出金等の利息収入」が通貨発行益であると説明している。
ハッキリ言ってこれは間違いだ。
金融資産の利息収入と通貨発行益はまったく関係ない。
日銀は長い間金融政策で間違いを犯し続けた。
特に白川日銀のとき酷い金融引き締めでデフレが悪化し経済が大ダメージを受けた。
こういう説明を公表し続けることから基本的な経済への理解に欠けているのかも知れない。

リフレ型BI

リフレ型BIの特徴を明記する。

通貨発行益と税収を財源とする

BIの財源には税収の他に通貨発行益を使用する。
全てを税収だけで実施するわけではないので増税する必要がない。
増税が必要なものでも増税幅は少ない。

BIによる有効需要の増大を目指す

通常はBIの目的は経済弱者の救済と、複雑化し管理コストが嵩んだ既存の社会保障制度の単純化にある。
生活保護制度などは支給基準が厳しく受給資格の審査が難しい。
審査に専門の公務員が担当しなければならないので人件費もかかる。
また、水際作戦などで本来受給資格がある人でも支給しなかったりする。
また、少し働いて所得を得るとその分支給額が減額されるため社会復帰を妨げる側面もある。
だから無条件にBIで分配してしまった方が良いのだ。

リフレ型BIのもう一つの目的としてマクロ経済政策がある。
現在のインフレ率の調整は買いオペと言う金融政策と、公共投資を中心とした財政出動による有効需要拡大が主な手段になる。

買いオペは政府が発行した国債を日銀が新規発行通貨で買い取るこどで通貨発行する手続きである。
これは政府が国債を発行しないと通貨を発行できないため、日銀はインフレ率の調整に十分に責任を持つことが出来ない。
日銀が株を買うこともできるが日本中の企業の株式を日銀が買うわけにもいかない。社会主義国家ではないので株価に市場法則が働かなくなる。
そこで新規発行通貨を日銀から国民(消費者)へ直接配ることで、通貨発行するということが考えられる。
これなら国債が無くても通貨発行は可能だ。
また、通貨発行するときは経済がデフレ傾向なので有効需要を増加する必要がある。
新規発行通貨を国民へ分配すればそのまま有効需要の拡大に繋がる。
インフレ率の調節がやりやすい。しかも反応が早い。
一石二鳥なのだ。
これが後で説明するネオリベ型BI との大きな違いだ。

BIを導入したからと言って社会保障を廃止しない

ネオリベ型BIは社会保障歳出の削減が念頭にあるのでBI導入と同時に社会保障を廃止してしまう。
しかしリフレ型BIは経済成長の手段であり、インフレ率の調整とマクロ経済の成長が念頭にあるので歳出に多少の無駄があっても国家経済が成長するなら良しとする。
BIとの重複分はもちろん控除されるが既存の社会保障が廃止されるわけではない。
下手に社会保障を削減すればその分有効需要が減り経済が縮小してしまう。

積極財政論である

現在、経済政策においてリフレ派やケインズ派などを中心とする積極財政派と財務省と財界、マスコミを中心とした緊縮財政派が対立している。
リフレ型BIは積極財政派である。

経済成長の手段でもある

リフレ型BIにも色々あり支給金額も様々だが、BIが有効需要の増大策なので、BI によって経済成長を行うという計画がある。
最初は月1万円など少額から初めて経済成長と共に支給金額を増やしていくなので金額が定まらない。
財源に税収と通貨発行益を組み合わせるので二階建て構造のBIになる。
井上智洋案だと税収BIが最終的に7万円、通貨発行益BIがインフレ率調整で可変支給となる。
現在の日本なら通貨発行80兆円、国債買い取りがその内30兆円なので、差し引き50兆円がBI財源になる、月3万円強といった金額になる。

ネオリベ型BIとは

ネオリベ型BIの特徴を解説する。

全ての社会保障を無くすためのBI

生活保護などの欠点を解消することを念頭においている点はリフレ型BIと同じである。
ネオリベ型BIは生活保護や年金などバラバラの行政によって複雑に管理され管理コストが無駄に膨れ上がっている社会保障をBIに一本化して単純化することにより行政コストを削減することを念頭に置く。
従ってBI導入と同時に全ての社会保障は消滅する。

根底に有るのは歳出の削減(緊縮財政論)

税金の無駄遣いを無くすことを前提に全ての制度を設計するので、国家全体の歳出は減る。
国の歳出が減るということはマクロ経済的に見て経済が縮小する。
少しでも経済が分かる人間ならネオリベ型BIには反対するだろう。

財源は税収だけ

ネオリベ型BIを唱える人はどちらかと言えば、マクロ経済学自体に否定的で中にはデフレ肯定派もいる。
通貨発行益の存在を認めていない人も多い。
アベノミクスでハイパーインフレが起きると考えている人もいる。
そんな人々が考えるBIなので財源は税収だけになる。
通貨発行益を一切使わず税収だけで一人7万円を配布するので財源は100兆円に達する。
当然税収は不足するので大増税となる。
しかも年金も生活保護もなくなって7万円だけで暮らせというのだ。
しかもデフレ派は日本はもう経済成長しないと考えている人が多い。
つまり大増税したあげく経済成長の目も詰んでしまうのだ。
こんなバカな方法論は無い。

BIを導入したからと言って社会保障を無くす必要は無い

リフレ型BIの金額は税収で7万円程度、通貨発行益で2万から3万円程度になると思う。
10万円では暮らせないという意見もあると思うが、10万円なら地方なら暮らせる。
東京など大都市だと生活保護に比べて2万円ほど不足するがこれは地方自治体が払えばよい。
現在でも生活保護の半分は自治体負担である。
財政の強い都市部だけ2万円ほど生活保護を支給し他はBIに任せてしまえば良い。東京の場合支給金額12万円強の半分の6万円強を現在でも負担しているので楽勝だろう。
所得の低い地方ならBIだけで暮らせる。
社会保障を全て無くす必要はない。

BIは有効需要を増大する手段であるべき

今の日本は需要不足であり有効需要を拡大しなければならない状況にある。
テクノロジーの進歩により総供給量は急速に拡大する可能性が高い。
需要不足は益々深刻になる。
BIは急拡大する総供給に合わせて迅速に有効需要を拡大する手段として理想的だ。
マクロ経済政策としてのBIが必要なのだ。

ネオリベBIはデフレを悪化するだけ

ネオリベBIは歳出を削減し有効需要を減らしデフレを悪化させる。
政府の予算に通貨発行益を使わないなど馬鹿げている。

現在の日本でも通貨発行益は十分に使われていない。
財政法と特別会計法の制約のためだと思う。
これらの法を改正して出来るだけ早く積極財政によるBIを実施すべきだと思う。

参考資料


森永卓郎さん×井上智洋さん(その1)株価は上がってもデフレ脱却ができないわけ

森永卓郎さん×井上智洋さん(その2)「雇用」は崩壊し、中間層も消滅。大格差時代の到来!?

森永卓郎さん×井上智洋さん(その3)BI導入と「働く」価値観の大転換で、ディストピアをユートピアに



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