TPPはグローバリズムというよりブロック経済だ

2019年1月28日月曜日

TPP 経済政策

t f B! P L

昨年末TPP11が発足した。
TPPに付いては様々な批判の声が上がっているが、私はTPP賛成派だ。
TPPはかなり壮大な自由貿易同盟なので簡単には語ることが出来ない。
そこで少しずつTPPについて語っていきたいと思う。

TPPへの代表的批判

TPPへの批判の中に「TPPはグローバリズムでありグローバル化特有の経済的問題を引き起こす」というものがある。
グローバル化特有の問題は代表的なモノは以下の三つ。
「底辺への競争」
「国家主権の毀損」
「民主主義の毀損」
それぞれを簡単に説明する。

底辺への競争

グローバル化すると所得分配の重要な担い手である製造業などが工場を人件費の安い後進国へ移転するために世界全体で先進国の賃金水準の低下が起きる。
後進国のほうが圧倒的に多い為、世界の賃金水準は低い方へ傾く。

国家主権の毀損

韓国などが良い例だが国際的なビジネスが大規模に行われることにより大資本を持つ企業の力が強くなる。
場合によっては企業や大資本家が国家より大きな力を保有するようになり国家が国民第一の政策を選択できなくなる可能性がある。
韓国は主要企業の株式の半数以上を外資に保有されており、金融政策などで緩和的政策を取ると外資が資産防衛のため資産を海外に避難してしまうので、雇用政策などで金融緩和を実施できない。
このようにグローバル化で国家主権が失われる場合がある。

民主主義の毀損

よくTPPのISD条項に対する批判で言われることだが、グローバル化すると国民の利益を考えて採用された規制などが巨大外資の不利益に繋がった場合、賠償を請求されるため国民第一の政策が施行できなくなる。
という意見がある。
環境保護規制や食品安全基準など企業利益を損なう規制を新たに採用できなくなり、民主主義が市場を御せなくなるという意見だ。

TPPはグローバリズムか

TPPはあくまで加盟11カ国の中だけで自由貿易を行う条約(協定)なので、世界中を相手に自由貿易を目指すグローバリズムとは必ずしも同じでは無いと思う。

また、グローバリズム的政策は多くの場合、小国の主権を無視してしまう内容が多いが、TPPの場合は貿易のルール作りと運用をTPP委員会が調停して進める。

TPP委員会による調停

TPP委員会は加盟各国の大臣及び上級職員(高級官僚など)が派遣されて構成する議会のようなモノだ。
加盟国の大臣と上級職員が話し合ってルールや運用方法を決めていく。
意志決定はコンセンサス方式を採用しており、加盟国の全会一致で決まる。
一国でも反対を唱えれば無効となる。
国家主権を侵害するような内容ではない。
また、TPP委員会自体が民主的な議会のようなモノなので、各国の民主主義を毀損することも考えられない。

パネルによる紛争解決

紛争解決にはTPP委員会の配下に各国から派遣された専門家によって構成される「パネル」という調査調停機関が紛争ごとに設置される。

「パネル」は紛争の正確な実態を明らかにするのが第一の目的だ。
そして正確な実態を明らかにすることで紛争解決の方法を提言することになる。
紛争の解決は主に「パネル」を中心に行われる為、いきなり投資紛争解決国際センター (ICSID)の調停を求めることは考えられない。
通常は「パネル」とTPP委員会が調停の主体となる。

もし「パネル」とTPP委員会を無視していきなり投資紛争解決国際センターへ提訴してTPP委員会の意向に背く判決が出れば、その国や会社(投資家)はその後TPP域内で商売がやりにくくなるだろう。
TPP委員会は何らかの対策を立てるはずだからだ。

ISDSで国内の法令や政策の変更は強制できない

また、投資紛争解決国際センターが仮に賠償の支払いを命じたとしても、賠償金を払ってお終いである。
よく法律改正ができなくなると言われているが、外務省の資料を見る限りそんなことは無い。


「仲裁裁判所は,投資受入国の協定違反及び投資家の損害を認めた場合,損害賠償の支払を命じる。
(投資受入国の法令や政策の変更を命じることはできない。)」
と書かれている。

投資紛争解決国際センター(ICSID)は国内の法令や政策の変更は強制する権限を持たない。

従って、TPPが民主主義を毀損することはあり得ない。


「底辺への競争」も考えにくい

「底辺への競争」は自由貿易により賃金の安い国へ仕事が流れていき、全体の賃金水準が引き下げられる現象だ。
ではこれがTPPでも起きるか考えてみよう。

TPP加盟国の一人あたりGDP(USドル)-2017年
アメリカ
59,792.01
シンガポール
57,713.34
オーストラリア
55,692.73
カナダ
45,094.61
ニュージーランド
41,572.27
日本
38,448.57
ブルネイ
28,278.43
チリ
15,067.72
マレーシア
9,755.18
メキシコ
9,318.82
ペルー
6,731.85
ベトナム
2,353.36

加盟国の一人あたりのGDPを見ると日本はアメリカを除いて、5番目である。
また下の国でもブルネイやチリはかなり豊かで全体の賃金水準を引き下げるような貧しい国では無い。
1万ドル以下の国は四カ国しかない。
しかもマレーシアとメキシコはほぼ1万ドルの中進国だ。
ペルーも6700ドル台で貧しい国とは言えない。
となると全体の賃金水準を引き下げる貧しい国はベトナムだけしか無い。
そしてベトナムは今急速に成長している国である。
この国が中進国になるのはそれほど遠い未来では無い。

TPP加盟各国の一人あたりのGDPを見る限り日本人の賃金水準が引き下げられるとは考えにくい。
ベトナムは間違いなく引き上げられると思うが、半数以上が豊かな国なのでむしろ賃金引き上げ圧力の方が高いのではないだろうか。

TPPはブロック経済

自由貿易の議論はローカリズムとグローバリズムの対立という文脈で語られることが多いため、TPPはグローバリズムの一種として捉えられているが、私はTPPはローカリズムとグローバリズムの中間に位置づけられるブロック経済だと思う。

グローバリズムのように国家主権も民主主義も押しのけて市場法則を強制するような趣旨の協定では無い。

環太平洋パートナーシップ協定の前文に次の一文がある。

「透明性、良い統治及び法の支配を促進し、並びに貿易及び投資における贈収賄及び腐敗行為を除去すること、」

TPPの調停役のTPP委員会自体が民主的な意志決定機関であると同時にそれが従う法と言える「環太平洋パートナーシップ協定」の条文にも「透明性、良い統治及び法の支配を促進し」と明記されている。
これがグローバリズムのように国家主権や民主主義を侵害することがあるわけが無いのだ。

TPP自体が「法の支配」の配下に居るのだから。

一般的なグローバリズムとTPPのようなブロック経済を混同した議論はかなり不正確な議論になると思う。
グローバリズムとブロック経済を明確に区別すべきだろう。

TPPは国民の権利を侵害するような危険なモノではない

ここまで読めばTPPが一般に言われているほど、国家主権を侵害し、民主主義を毀損するような危険なものでは無いことは理解できると思う。
また、一人あたりのGDPを見れば、自由貿易によって国民の所得水準が低下するようなものでもないことが分かると思う。

TPPに対する警戒の声は殆ど、事実と異なる「陰謀論」に過ぎないと思う。

政府発表のTPPの資料を見てぜひ確認してほしい。




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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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