通貨を政府通貨と日銀債と国債の3つに分ける

2019年1月12日土曜日

経済政策

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この話は前回の議事「財政法4条と特別会計法42条の改正が必要だ」の続きになる。
しかし前の記事を読み返す必要は無い。

今回は貨幣制度改革の話だ。

経済学者の井上智洋氏は以下の著書で社会保障制度改革を含む大胆な貨幣制度改革を唱えている。

井上智洋案の内容については、上記の「AI時代の新・ベーシックインカム論」を読んでください。
ここでは内容の解説はしません。
私は井上智洋案の影響を大きく受けています。

経済クラスタは何故「もっと国債を発行しろ」と言うのか

「国債は国の借金だ」という認識の人には経済クラスタの人々が「もっと国債を発行しろ」と主張することが理解できないと思う。
おそらく次のように思っているだろう。

「経済クラスタは国債を沢山発行しろと言うが、国債は後に返済しなければならないから、累積債務が多くなると将来の返済負担が重くなるから、そんなに国債を発行できないのではないか」
「国債を発行しすぎると国債の金利が高くなり金利に支払い負担が重くなり財政を圧迫するのではないか」

これらの誤解は「国債は借金である」という認識から生まれている。
しかし、国債は単なる借金ではなく「通貨」と「債務」の二つの側面を持つ債券だ。
少し長くなるが順を追って説明する。

中央銀行の無い国を想像してみよう

現在は日本を含む全ての国が中央銀行で通貨を発行している。
これは政府が直接通貨を発行すると通貨価値(インフレ率)の調整が難しくなり高インフレが起きやすくなるから、通貨発行権を政府から独立させ通貨価値の調整(通貨発行)を中央銀行に任せる為だ。

仮に中央銀行が無く政府が通貨を発行する国を想像してみよう。

図「中央銀行の無い国」

「中央銀行の無い国」では政府が直接通貨を発行する。
ご覧の通りこの国には国債が存在しない。
政府が借金することは可能だが、貨幣制度上は国債の存在は必須ではなく国債が無くても貨幣の流通は可能だ。
通貨発行(金融緩和)は銀行・企業・家計など経済主体に直接配布することになる。
実際は政府は公共投資・防衛・福祉・教育など行政サービスを民間へ提供しており、その費用の一部を自ら発光した通貨によって賄うことになる。
直接通貨を配布することにはならない。

ここで分かると思うが、通貨を発行すると発行した通貨の価値の分だけ利益が生じる。
政府というモノは常に通貨発行分の利益を獲得しているものなのだ。
これを通貨発行益と呼ぶ。
(日銀の通貨発行益とは別のモノなので注意してください)

現在の日本に当てはめると年間で通貨の発行額が80兆円。
政府の予算が100兆円、税収が62兆円なので、
通貨発行益80兆円を政府予算に組み込み、税収は20兆円ほどで100兆円の予算が組めることになる。
税率を大幅に下げることになる。

中央銀行の有る国

現在の日本を含め先進国は日銀などの中央銀行から通貨を発行している。
通貨発行量が多すぎると高いインフレになるため、中央銀行を政府から分離して通貨発行量を政府の都合に関係無く調節する為だ。
中央銀行の役割は通貨の価値が年間2%ほどの速度で下落する程度に通貨を発行することだ。

図「現在の日本の貨幣制度」

中央銀行の有る日本では、政府が国債を市中銀行へ売り、その国債を中央銀行が新規発行通貨で買い取ることで通貨発行を行う。
これは見方を変えると通貨が国債と日銀債(円)の二つに分離しているとも言える。
「中央銀行の無い国」では政府が直接通貨を発行していたが、日本では国債を日銀に買い取らせることにより通貨発行益を得る。
日本の貨幣制度では国債が存在しないと貨幣を市場へ流通させることが出来ない。
国債が存在しないと中央銀行は通貨発行すらできない。
(株式購入や家計への定額給付などの手段をとることもできるがこの話は省略する)

中央銀行の有る国の政府が通貨発行益を得るには国債を発行して中央銀行に買い取らせる必要がある。

現在の日本では財政法4条や特別会計法42条などによって国債発行が制限されており、政府は本来獲得可能な通貨発行益を十分に獲得できない。
明らかに法律が間違っている。

経済クラスタが「もっと国債を発行しろ」と主張するのは以上の理由によるものである。

国債には通貨と債務の二つの役割が与えられている

日本の貨幣制度から考えて、国債には通貨としての側面と、政府が民間から借入した債務としての側面が同居している。
国債という一つの債券に通貨の役割と債務の二つの役割が与えられていると言っても良い。
国債の債務の側面が通貨としての便益を損なっている。
国債は通貨の役割と債務の役割を分離すべきだ。

国債を政府通貨と国債(債務)の二つに分離する

国債は政府通貨と国債の二つに分離して日銀債(円)と合わせて三つの通貨体制で貨幣制度を運用すべきだ。

図「政府通貨と日銀債と国債のある国」
政府は政府通貨を発行し日銀に買い取らせる。
日銀は新規発行通貨(日銀債)で政府通貨を購入する。
政府通貨は日銀だけしか購入できない。
従って日銀が新規発行した通貨の量までしか政府通貨は発行出来ない。
もし災害などでより多くの予算が必要になれば国債を発行して市中銀行に買い取って貰う。
国債は現行法に従いゆっくりと返済していく。
通貨発行益は政府通貨で得る。
市中国債は殆ど無くなってしまうので日銀の通貨発行(日銀債)は政府通貨買取と家計への定額給付が主な手段となる。

この制度なら政府通貨の総量は日銀債の総量を上回ることが無い。
政府通貨の価値が日銀債の価値を下回ることがないので、政府通貨の金利はほぼゼロになるだろう。

また、新規国債の発行は災害発生時のような非常時以外は必要無くなってしまう。
市中国債はほぼ消滅してしまうだろう。
現在の通貨発行は市中国債をに日銀債で書いとることで行っている(買いオペ)。
市中国債が無くなってしまうと通貨発行できなくなるので、通貨発行は家計への定額給付で行うことになる。
これは社会保障制度ではなく金融政策である。

現在の日本に当てはめると、
日銀債発行額は年間80兆円。
政府通貨発行額が31兆円。
日銀が政府通貨を買い取った残りが49兆円なのでこれを家計(国民)へ定額給付する。
年額38万円ほど、月額で3万円強である。

ちなみに政府通貨発行額を10兆円増やして累積債務(既存の国債)10兆円と交換しても良い。
この場合も分配の原資は49兆円である。
政府通貨の価値の下落が気になるかも知れないが、累積債務の総額は1090兆円ほどで、日銀債の総額はマネーストックM3という数え方で1342兆円である。
累積債務1090兆円を全額、政府通貨に交換しても日銀債の総額1342兆円を超えることはない。

必要な法改正

国債を政府通貨と国債の分離するなら法改正も簡単になる。
既存の国債運用の法律は何も変更しなくてよい。
財政法も特別会計法も改正する必要は無い。
それどころかこれまで毎年制定していた特例公債法すら必要なくなる。

替わりに「政府通貨法」という政府通貨の運用ルールを定めた法律を新設することになる。
その内容は次のようになる。

政府通貨法

(1)政府は政府通貨を発行できる。
(2)政府通貨は中央銀行(日銀)だけが買い取ることができる。
    (他の経済主体は政府通貨を購入できない)
(3)政府通貨は円建てで発行する。
(4)政府通貨の金利は市場価格で決める。

さらに日銀法を一部変更することになる。

日銀法の変更点

(1)日銀は政府通貨を買い取らなければならない。
(2)政府通貨は新規発行通貨(日銀債)か国債によって買い取る。
(3)通貨発行は政府通貨買取と家計(国民)への定額給付で行う。

通貨を政府通貨・日銀債・国債の三つに分離することで貨幣制度はとても単純な制度になる。
国債の金利や累積債務のことを考えなくて良くなるので貨幣制度の運用が単純になる。
また、日銀債は独立したままなので、日銀債の価値(インフレ率)の調整もこれまで通り行える。
むしろ日銀債の定額給付により有効需要を金融政策で調整できるのでインフレ率の制御が容易になる。

八方丸く収まる。

ポスト安倍で貨幣制度改革を

安倍政権の任期中に貨幣制度改革を行うのは無理だ。
国会議員の理解が得られない。
時間がかかる。

だがポスト安倍政権では貨幣制度改革に取り組んで欲しいと思う。
今のままでは財政法4・6条と特別会計法42条に従って累積債務を返済しなければならなくなる。
返済する必要がないのは、この記事を読んだ人なら分かるはずだ。

別にこの方法でなくても井上智洋案の貨幣制度改革でも良い。

貨幣制度改革について考えてみて欲しい。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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