政府の負債は民間の資産

2018年12月28日金曜日

経済政策

t f B! P L

債務、債権、国債とは

債権とは人に貸したお金のことだ。
債務とは人に借りたお金のことだ。
債券とは借用証書のことだ。

社債の場合、発効した会社にとって社債は債務だ。
社債を保有する人にとって社債は債権だ。

国債の場合、発効した政府にとっては債務だ。
国債を保有する人にとって国債は債権だ。
日銀にとって国債は債権だ。
民間の銀行にとって国債は債権だ。
国民にとって国債は債権だ。

政府の債務

現在、政府は累積で 1085兆円  1091兆円の国債を発効している。
この国債を日銀や民間銀行とその他国民で保有している。
5%ほど海外で保有しているが、同時に日本は海外にそれ以上の債権を持っているので、国家としては債務より債権を多く持つ「債権国」だ。
つまり政府の債務は国民が貸し付けたものだ。
国債は国民の債権だ。

(※2018/12/29 修正: 政府債務と日銀保有国債の金額を修正しました)

さらに国債の 430兆円  456兆円ほどは日銀が保有している。
日銀は政府が55%の株式を持つ株式会社である。
日銀は政府の所有物である。
従って日銀の持つ債権も債務も全て政府の所有物だ。
政府の資産と負債の状況を把握する為に会計上政府と日銀の資産と負債を合計する概念がある。
これを統合政府と呼ぶ。
最近IMFが世界の先進国の財務状況について調査し、各国の統合政府の資産と負債についてのレポートを発表した。


このレポートの「Figure 1.1.」のページに以下のような表が記載されている。
要点だけ引用する。

Figure 1.1. Public Sector Balance Sheets
(Percent of GDP)
Country
Financial assets
Liabilities excluding pension
Pension liabilities
Total nonfinancial assets
Net worth
国名
金融資産
年金以外の負債
年金債務
非金融資産合計
純資産
Japan
146.6
-287.5
-29.3
164.5
-5.8
Germany
145.0
-189.3
-39.2
64.0
-19.6
United States
90.8
-136.7
-55.0
84.2
-16.7
France
81.4
-174.7
-54.3
105.6
-42.0
数値はその国のGDPに対するパーセンテージであり、政府の資産と負債のバランスを表している。
ごらんのように日本は総資産から総債務を差し引いた純資産が「-5.8%」と僅かな赤字に留まっていることがIMFによって報告されている。
GDPを550兆円とすれば、-5.8%は31.9兆円の赤字になる。
政府の負債としては問題ないレベルだ。
負債はストックでありフローのGDPと比較することそれ自体に意味は無い。(年収と貯蓄を比較するようなもの)
相対的規模を表す基準としてGDPをIMFが選んだのだろう。
また他の先進国の政府債務の規模を見ると、日本より大きな負債を抱えた国はたくさん有る。
ドイツは19.6%の赤字。
アメリカは84.2%  16.7%の赤字。
フランスは105.6%  42.0%の赤字である。
「大丈夫かこれらの国?」と思うかも知れないが大丈夫である。
政府は負債を抱えなければならないのだ。
後で説明する。

よく「日本には1000兆円の借金があり、国民1人あたり850万円の債務を持つことになる」と言われている。
しかし、これは嘘だと分かる。

第一に、国債は政府の債務だが国民の債権なので1000兆円は国民の財産だ。
この理屈だと、国民1人あたり850万円の財産を持つことになる。

第二に、先のIMFレポートにより統合政府の純債務は非常に小さいのが証明されているので、政府は1000兆円の債務と同時に1000兆円の資産(債権)を持つことを意味する。
プラスマイナスゼロだ。

政府の財政状況は極めて健全である、と言える。

社会全体の債権総額と債務総額は同じである

貴方が一万円を知人に貸せば、一万円の債権を貴方は持ち、知人は一万円の債務を持つ。
貴方がクレジットカード会社から一万円借りれば、一万円の債務を貴方が持ち、カード会社は一万円の債権を持つ。
ここで社会全体の債権総額は貴方の二万円であり、債務総額は知人の一万円とカード会社の一万円の計二万円である。
ここで社会全体の債権総額は貴方の一万円とカード会社の一万円の計二万円であり、債務総額は知人の一万円と貴方の一万円の計二万円である。(2019/1/3 間違いを修正した)

貸した金の対面には借りた金がある。
カード会社が100人に1万円を貸せば100万円の債権を持ち、ユーザー100人は合計で100万円の債務を持つ。
別のカード会社Jカードが200万円をユーザー200人に1万円貸せば200万円の債権を持ち、ユーザー200人は計200万円の債務を持つ。

社会全体の債権総額は300万円で、債務総額は300万円だ。
先ほどの貴方の貸し借りを含めると、債権総額は302万円で、債務総額は302万円だ。

社会全体で、債権(貸した金)の総額と、債務(借りた金)の総額は同じになる。
よく考えれば当たり前のことだ。

このことを国家全体で考えてみよう。

政府部門、企業部門、家計部門、海外部門の資産と債務

国家経済を四つに分けて考える。

政府や官公庁、地方自治体、公的機関を政府部門
民間企業全てを企業部門
一般家庭や独身者の生活者全体を家計部門
外国との借入貸し出し(資産負債)全般を海外部門と分ける。
このような分け方を経済主体と呼ぶ。

債権と債務の合計は同じになる。
国と国の債権と債務の合計の場合も同じになる。

以下のデータは日銀の資金循環統計(2018年第3四半期)の金融資産の資料から経済主体ごとの資産債務の金額を表にしたものだ。


経済主体ごとの資産負債合計と差額(2018年9月) 
単位(億円)
資産
負債
資産負債差額
金融機関
41,022,032
39,627,631
1,394,401
非金融法人企業
12,622,520
19,297,268
-6,674,748
一般政府
5,802,898
12,843,809
-7,040,911
家計
18,594,126
3,196,685
15,397,441
対家計民間非営利団体
579,168
311,070
268,098
海外
7,084,037
10,395,188
-3,311,151
合計
85,704,781
85,671,651
33,130

金融機関と非金融法人企業、対家計民間非営利団体は企業部門だろう。
対家計民間非営利団体というのは労働組合や宗教法人、私立学校などが該当する。

これは日本という国家全体のバランスシートになる。資産(債権)の総額と負債(債務)の総額がほぼ同じになっている。
3兆円強の資産超過になるが、8570兆円規模の資産と負債に対して3.3兆円は 0.00038% にしかならないので「誤差」みたいなものだ。
つまりこの国家のバランスシートは「資産(債権)と負債(債務)の合計はゼロになる」ことを表している。

ちなみに海外部門の資産負債差額がマイナスになっているが、海外部門の負債は日本の資産であり、資産は日本の負債になる。
例えば日本の自動車会社がアメリカに100億円の工場を建てたら、日本にとって100億円の資産であり、アメリカ(海外部門)にとって100億円の負債である。

従って331兆円の資産負債差額は日本が海外に貸している「資産(債権)」である。

このバランスシートには日銀の資産債務が含まれていない。
金融機関の資産の一部は日銀当座預金に在り、政府債務の430兆円ほどは日銀が保有している。
そのことはこの表には反映されていない。
日銀の存在が無視されている。

政府の負債(債務)は民間の資産(債権)

上記資料の資産負債差額をグラフにすると以下のようになる。

2018年9月資産負債差額



資産(債権)と負債(債務)の総量は同じであり、政府と企業と海外の負債が家計の資産になっていることが分かると思う。
また、資産の裏側に必ず負債が存在し、経済というモノは全て負債が無ければ成り立たないということも分かると思う。
負債(債務)が国家から消滅したら、同時に資産(債権)も消滅する。
全ての通貨や有価証券、国債や社債は全て「借用証書」であり「債券」なのだ。
家計が資産を持つためには政府や企業が負債を持たなければならない。
もし企業も資産超過の黒字会計であれば、政府以外に債務の引き受け手が居なくなってしまう。

民間が資産(債権)を持つには政府が債務を持たなければならない

企業が債務を増やし始めたのはごく最近のことであり、それまでは債務を殆ど保有していなかった。

家計も企業も債務を保有していなかった状態では、政府が債務を保有しなければ、国家全体から債務に対応する債権(資産)が失われてしまう。
これは債券(有価証券、社債、国債)が消滅することを意味する。
債券が消滅するということはその債券を用いて行われていた、取引(消費)が失われることを意味し、その分だけ市場(経済)が縮小することを意味する。

政府はもっと国債を発効しろ

少なくとも正しい経済政策としてみれば、現在デフレ脱却に取り組んでいる政府はもっと国債を発行して、負債(債務)を増やさなければならない。
政府の負債は、企業や家計の資産になるからだ。
政府が負債を増やすことは、企業や家計が資産を増やすことを意味し、市場(経済)を拡大することを意味する。
だから政府は経済対策として国債を発行し政府の債務と民間の資産を同時に増やす必要があるのだ。

しかし、実際には「財政法4条と6条」の制約があり、上記の正しい経済政策を十分に取ることが出来ない。
これについては、後日解説する。

また、通貨も日銀の債券であり債務なのだが、これは通常の債務とは別の扱いになっている。
これについても、後日解説する。



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