入管法改正は外国人労働者を増加する為の法改正ではない !(1)

2018年11月16日金曜日

経済政策 時事 政治

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「出入国管理及び難民認定法(入管法)及び法務省設置法改正案」が閣議決定した。

以下、この法案を「改正入管法」と呼ぶ。

私は以前、
「外国人労働者受け入れがグダグダ過ぎて政権弁護する気になれん !」

という記事を書いて政府の入管法改正を批判した。
しかしこの記事の法解釈は間違っていた。
前言を撤回し入管法改正を支持する側に付きます。

先の記事の何が間違っていたかと言えば、
私は入管法改正を「外国人労働者の受け入れを拡大して人手不足を緩和する経済政策」と解釈していた。
だから「受け入れる外国人の人数が少なすぎるので毒にも薬にもならない無意味な経済政策だ」と考えていた。
しかし法務省の「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」をよく読むとこれはそもそも「経済政策ではない」ということが分かる。
それどころか「外国人労働者を増やす政策ですらない」ということも分かる。

法案の新旧比較をよく読んで欲しい。
新旧比較

また、こちらの資料で法務省が簡潔に纏めている。

入管法改正の内容を簡単に要約すると次のようになる。

入管法改正の主な内容


管理範囲の拡大

従来の入管法(出入国管理及び難民認定法)は日本人と外国人を含む全ての人の出入国だけを管理していた。
これを出入国だけではなく「本邦に在留する全ての外国人の在留」も対象とするように管理対象を拡大した。
これにより従来は特別な管理を行っていなかった「高度人材」や「技能実習」などの外国人労働者も管理対象となるようになった。

外国人労働者の定義の拡大

従来、「高度人材」と「技能実習」の二種類の属性だけで管理していたものを、新たに「特定技能」という属性を加えて三種類で管理する。

「特定技能」には「一号」と「二号」の属性がある。
「特定技能一号」は受け入れ業界で即戦力として活動可能な知識と経験を持ち、日常会話と生活に支障の無い日本語力を持つ者。
能力は試験などで確認する。

家族の帯同は認めない。
滞在期間は五年以内。

「特定技能二号」は熟練した技能を要する者を想定しており、「特定技能一号」が業所管省庁の定める一定の試験に合格する等で「特定技能二号」へ移行できる。

家族の帯同が認められ、滞在期間に制限は無い。

十年以上滞在していれば永住権の取得申請ができる。
永住権を取得するには
「素行善良」
「独立して生計を営むことが可能な資産と技能がある」
「罰金刑や懲役刑を受けていない」
「納税などの公的義務を履行している」
「公衆衛生面で有害ではない」
などの条件を満たしている必要がある。

2018年11月17日追記。

出入国在留管理庁の新設

「本邦に在留する全ての外国人の在留」の管理監督を実施する実行機関として「出入国在留管理庁」が新設される。
この管理庁により「在留資格認定証明書」の発行と停止、人手不足の状況確認。
外国人材への支援の管理。
指導・助言・改善命令などを行う。

新たに「登録支援機関」と「受け入れ機関」を定義しており、それらを監督する。

悪質な仲介業者の介在を防止し、不当な金銭の徴収が無いか確認する。

同一分野での外国人の転職を支援する。

などの機能を有す。

「登録支援機関」と「受け入れ機関」

「登録支援機関」と「受け入れ機関」を各業界ごとに設置し、以下の外国人支援を行う。

入国前と在留中の生活情報の支援。
日本語習得支援。
住宅の確保。
転職の支援。
各種行政手続きの情報提供。
相談・苦情への対応。

また、それらを実施する能力があるか出入国在留管理庁によって確認される。

業所管省庁の外国人管理義務の拡大

従来は在留外国人の状況や人手不足の状況など関係各省庁は特に管理監督する義務は無かった。
しかし条文で言うところの「分野所管行政機関の長等」は在留する全ての外国人の状況を確認し人手不足の状況も確認しながら、入国制限を制御する義務を負う。

※条文には、「外国人受け入れ産業上の分野を所管する関係行政機関の長並びに国家公安委員会、外務大臣及び厚生労働大臣(以下この条において「分野所管行政機関の長等」という。)」と書かれている。

確認すべき内容は以下のようになる。
人材不足の状況を確認する。
必要な人材の質を明確に定義する。
人手不足が解消されたら在留資格認定証明書の交付を停止して外国人の入国を停止する。
具体的にどのような状態になったら入国を停止するのか予め方針を決めて置かなければならない。

特定技能の雇用契約法の新設

当たり前だが特定技能の雇用契約についての法律が新設された。

原則として直接雇用。
報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならない。
また、当然だが特定技能は労働法の保護を受ける。

高度人材と技能実習の管理支援体制も変わる

従来の入管は人の出入国を管理するだけで在留外国人の管理や支援は行っていなかった。
だから技能実習などは職場のトラブルがあっても相談できる窓口が無く、非人間的待遇などで失踪している技能実習が7000人あまりも居るという。

入管法改正で、出入国在留管理庁の元、業所管省庁と 登録支援機関、受け入れ機関の体制整備により、在留外国人の状態監視や管理監督・支援の体制がガラリと変わり充実することになる。

問題の多い技能実習も諸機関により雇用側への改善指導と、外国人側への支援と相談の体制が揃うことになる。
技能実習については法律の変更は無いが体制の変更の恩恵は受ける。

外国人労働者の受け入れ人数の制限

これは以前書いた記事にも書いていたが、当初は「2025年までに50万人ほど受け入れる」と発表されていた。
2018年からなので年間7万人のペースで受け入れることになる。
最近のニュースでも「5年間で34万人受け入れる」と発表されており「年間7万人のペース」は間違いないようだ。

これは達成目標ではなく入国制限であり「上限」である。
「これ以上は受け入れない」という意味である。

今回の外国人労働者の受け入れにより労働者の賃金が下落することは無い

経済クラスタは
「人件費の上昇には人手不足が必要だ。
外国人労働者の受け入れにより人手が余り賃金上昇圧力が失われる。
外国人労働者は受け入れるべきでは無い」
と主張している。

私は以前の記事にも書いたが、今回の入管法改正による外国人労働者の受け入れにより、日本人の労働者の賃金が下落したり、賃金上昇圧力が失われることは無いと考えている。

具体的な数字で説明する。

現在の求人件数は273万人、求職者数は169万人であり、104万人の求職者不足である。
現在の就業者数は6714万人(2018年9月)、前年同月から119万人増加している。
毎年、100万人就業者数が増え、さらに100万人求職者が不足している現在の日本で、年間7万人程度の外国人労働者が入ってきたところで「焼け石に水」であり労働者の賃金水準には全く影響しないと断言できる。

法案を見る限り、外国人は無尽蔵に入国できるわけではなく、厳しく入国人数を制限される。

外国人労働者は入管法改正で増やすのではなく、既に増えている

外国人労働者は今回の入管法改正で増えるのではなく、既に127万人の外国人が入国している。
2012年68万人だった外国人は、アベノミクスが始まってから増え始め、
2013年は71万人(3.6万人増加)、
2014年は78万人(7万人増加)、
2015年は90万人(12万人増加)、
2016年は108万人(17.6万人増加)、
2017年は127万人(19.5万人増加)、となっている。

過去5年間で59万人増えている。
今後、5年間で34万人(上限)受け入れるという発表を思い出して欲しい。

就業者数は
2012年6280万人
2013年は6326万人(46万人増加)、
2014年は6371万人(45万人増加)、
2015年は6401万人(30万人増加)、
2016年は6465万人(64万人増加)、
2017年は6530万人(65万人増加)、

雇用の拡大と共に増えている。

現時点で外国人は多数入っておりそれでも104万人の求職者不足なのだ。

つまり、入管法改正で外国人を増やすのではなく、既に増えているから入管法改正で適正な制限と管理体制を敷き、外国人を適切に管理保護していこうという話なのだ。
発表された数字の通りなら外国人の受け入れ人数は減少するはずだ。
現在年間19万人流入しているが、今後は7万人程度になる。
明らかに流入規制の強化なのだ。

安い労働力を外国から連れてこようなどという話では無いのだ。

先に「働き方改革」で「同一労働同一賃金」が制定されており、更に入管法改正により労働法により特定技能外国人は守られるようになり、外国人差別も禁止され、取り締まり体制も出入国在留管理庁の設置により整えられる。

外国人を安い労働力としてなど使えなくなるのだ。
経済クラスタと保守派の主張は的外れだ。
事実と異なる。


明日に続く。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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