昔のSESについて語る

2018年10月18日木曜日

システム開発 システム業界問題

t f B! P L

最近になってSIer業界とSESに対する批判の声が高まっている。
私も批判者の一人になると思う。
個人的には業界が批判されるのは自業自得だと思っている。
その点は過去の記事で書いたのでここでは書かない。

今日はSESの話をする。
それも十数年以上昔の話だ。

法律も今とは違う。
ビジネス慣行も違う。
しかし、今の多重派遣や偽装請負が横行するSESと違って、合法的な事業が行われていた。

私の最初のSES経験


私がSESで初めて働いたのは1998年から2001年ぐらいの三年弱ほどだったと思う。
所属会社は通常の独立系の中小SIerである。大半の案件は持ち帰り案件として自社開発している。
一部の顧客のみ客先常駐開発を行っていた。
大手企業のシステム部門へ常駐で業務システムの開発に従事していた。
ユーザーサポートを管理するシステムで、クライアントサーバーで構築されクライアントはDelphi3、サーバーはHITACだったと思う。
製品自体は既に稼働しており、改修と新規機能追加が仕事だ。
契約はおそらく準委任だろう。
要件定義書を書かずに現場でユーザーと相談しながら改修内容を決めて対応し、完成したら即リリースして使い始めるというやり方だ。
締め切りも無く、要件を満たせなかったら簡単な仕様に仕様変更して対処することが許される、比較的柔軟な契約関係で働くことが出来た。
業務担当者とは直接合って話すことも出来る。
設計も開発もテストも自分でやる。
要件定義書は書かないがその場でDelphiでモノコック画面作ってユーザーの了承貰って即開発するので、今のアジャイル開発に近い。
チームは業務担当が二人、私を含めて情技師(ITエンジニア)が二人の四人である。
あと現場の業務管理職も時々顔を出す。

客先常駐ではあるが顧客の指揮命令は受けていない。
そもそも顧客は非情技(非ITエンジニア)なのでシステム開発の指揮が出来ない。

配属されているもう一人の情技師は同じ会社の上司で、派遣では無くチームで客先常駐している。
顧客は勤怠管理も行わない。
常駐しているのは対話が楽なのと、開発に必要な機材が現場にしか存在しないからだ。
従ってもし開発の一部を自社に持ち帰って開発しても問題は無い。

会社からチームで常駐していた情技師は八人居た。
それぞれ異なるシステムの開発を常駐で行っている。
契約形態も働き方も同じだ。

請負契約では無く締め切りが無いため、ノルマはキツく無く残業も殆ど無かった。
単価は70万円だったと思う。
正社員だったのでその金額の給料が出るわけではないが、経済的不満は無かった。

仕事人生で一番楽だった時だ。
その後は自社持ち帰り案件の開発を行っていたので客先常駐はほぼ無い。
他は長時間労働まみれの仕事人生だった。

近年のSES経験


2010年いくつか不幸が嵩み、2011年6月からSES専門の会社で働き始めた。東日本大震災が起こり急激な不景気に突入して仕事を選べなかった事情もある。
2014年まで三年勤めることになった。

SESでは最初は1年半強、大手製造業で常駐開発し、その後は二ヶ月から半年ぐらいの期間で、異なる顧客の常駐開発を行っていた。

ここでのSESの働き方は以前とは全然別のものだった。

商流は全て多重請負で最少で三次請け、最大で五次請けだ。
常駐先では顧客の指揮命令を受けて開発する。
多重請負の全ての階層で勤怠管理されるため、勤務時間を記録した勤務表を多重階層の会社の数だけ何枚も書かなければならない。
働く場所はだいたい一次請けの会社か発注元のオフィスを指定される。
契約は準委任契約で指揮命令を受けて時間管理と働く場所を指示されて働くので、完全に偽装請負であり違法である。

事実上の派遣労働なのだがコンペのような面接があり人材を選別する。
毎回履歴書と職務経歴書を提出し選考される。
当然、書類審査で落とされることもある。
本物の派遣であれば派遣労働法違反である。
法律上、派遣先には派遣者を選ぶ権利は無い。

会社にもよるが派遣先の態度も横暴なものになっている。
SES企業は特定派遣会社(特定派遣は今年の九月に廃止されています)なので社員は正社員なのだが、派遣先で問題があっても事実上何もしない。
パワハラや契約違反、嘘など派遣先も相当調子に乗っているのか法律の概念が無いかのように振る舞う。
たとえば、マネジメントが雑で指揮系統が統一されておらず同一時間に重複する作業指示をしたりする。当然要求された期間に終えることは出来ないので派遣元にクレームが行く。
派遣は多重派遣なのでクレームは伝言ゲームで自社まで来る。
伝言しているのは非情技(IT素人)の営業なのでクレームの内容を理解できない。
最後に届いた伝言は「なんかやった」と言う意味不明なモノになる。
自社の社長含めて全員が非情技(IT素人)なので事情を説明しても理解する能力が無い。システム開発の基礎知識が無いのだ。
自社だけでは無く仲介している会社は大半が非情技でクレームの内容を理解できない。こちらの説明も理解出来ない。
そして無条件に顧客に謝罪してしまう。
そして一方的にペナルティーを受ける。契約を切られることもザラだ。

要件定義から設計、開発、テスト、リリースまで任される場合もある。期間も決まっているので事実上の請負契約だ。
通常の請負契約なら見積もりを出し受託側が納期と価格を決めるものだが、SESは準委任なのでこの常識が通用しない。
価格も納期も顧客が勝手に決めてしまう。
更に通常の受託開発では特別な契約が無ければ、版権は開発会社に帰属するが、これも客先のものになってしまう。
通常の受託開発なら守られるルールもここでは守られない。
私は納期間近で結合テスト中のシステムで急なデータ構造の仕様変更を命令されて「不可能だ」と断ったら契約を切られたことがある。
これは完全に下請法違反である。
しかし例によってSES企業は皆謝ってしまうのだ。通常なら厳しく抗議し場合によっては訴訟になる話だ。

つまりSES企業はピンハネするだけで、それ以外のことは何もしないのだ。
しかも、労働者の権利も著作権も、本来下請法で守られる権利も、全て勝手に放棄してしまうのだ。営業の為に。

あまりにも様々な意味での権利侵害が激しく、しかも社員の立場だと取引先を訴えることも出来ない。
これがフリーランスなら即時、公取委と労働局と法律家に電話するところだ。
社長と会社が邪魔で訴えられないのだ。
ハッキリ言って居ない方が良いのだ。

他にも単価もマージンも教えない。
自社の名刺を使わせない。
仲介業者が多すぎて相談も連絡もスムーズに出来ない。
仲介業者ごとに10日締め、15日締め、25日締めと決算日が違うので残業手当の支給が二ヶ月ぐらい遅れたりする。
など欠陥だらけだ。

SESにはあまりにも多くの権利を奪い取られすぎる。

今はこの業界を離れているのでアベノミクス後のSESがどのようになっているかは知らない。
日本経済が一番苦しい時期だったので混乱やモラルハザードがあったのかも知れない。

昔のSESと今のSESの違い


昔はSESだけを生業とする会社は無かったと思う。
SIerの客先常駐開発も少なかったと思う。
SIerが特別な事情を持つ顧客に提供する特殊サービスといった感じだ。
特別な事情はだいたい特殊な機材を必要とするケースが殆どだ。

もう一つはコミュニケーションの問題だが、ウォーターフォールで開発する場合は常駐する必要は無い。
先に説明したようにアジャイルにも似た「現場の業務担当者」と相談しながら随時に機能追加して、すぐリリースする開発手法の場合は客先常駐が良い。
但し現在のように通信環境が発達していると事情が違うかも知れない。2000年の話なので。

あとはセキュリティーの問題だ。
開発に使用しているデータが顧客情報など機密データを扱う場合、社外にデータを持ち出さない為、常駐開発を要求される。
ただ当時は新規開発が多く既存データを使用して開発することは少なかったので常駐も少なかった。

現在のSESは多重請負が当たり前になっているが、昔は多重請負自体少なかった。
派遣も認められていなかったので、今のように個人を客先に常駐させることは無かった。
チームでの常駐が普通だ。

昔は顧客による指揮命令も無い。
今は多重請負で顧客がSIerになってしまう為、SIerから指揮命令を受けることになってしまう。(違法です)
しかし昔はユーザー企業に直接常駐するので顧客は非情技(非ITエンジニア)だ。
顧客は技術的なことは分からないので指揮命令など出来ない。
依頼するだけだ。

そして何より大きく違うのは「昔は法律を守っていた」という点だ。
偽装請負は無かったし、労働法も守られていた。
多重派遣どころか派遣も無い。
契約違反も無い、下請法違反もない。
自社の従業員の法的権利を侵害したりもしなかった。
納期間近の仕様変更などすれば受託側企業が激しく怒るし抗議する。
今のように何でも「はいわかりました」と無条件に承諾しない。
仲介業者が何でも顧客の言いなりになるのは彼らがIT素人だからだ。顧客の話を理解できていないのだ。
だから伝言を右から左へ流すだけになる。

昔は客先に出向するとき面接などしなかった。
契約は会社間で行われ、常駐メンバーは受託者企業が決めていた。
発注企業が勝手に決めたりしなかった。
請負契約や準委任契約ならば依頼された仕事を誰がどのように処理するかは受託者側の専権事項であり、顧客には仕事の進め方や誰が仕事をするかを指示選択する権利はない。
発注先企業を選択する権利だけがある。

さらに派遣であるなら派遣会社が送る派遣社員を選別する権利は無い。履歴書や職務経歴書で派遣社員を選んでいる時点で違法だ。

つまり現在のSESの派遣面接の仕方は請負、準委任契約と解釈しても、派遣労働と解釈しても、どちらも違法になるのだ。

昔のSESはこの点の課題をクリアしている。

SESを合法的な存在にするには昔に戻すしか無いのではないか?


以上、私の乏しい経験から「昔のSES」と「今のSES」を比較照合して問題点を列記してみた。

問題の解決策は「昔の合法的なSES」に戻すことだと思う。

創造的な人間ならもっと他の解決策を考え出すかも知れないので、他に手段はないとは言わない。
しかし、現状維持は良くないだろう。
最低限法律は守るべきだ、国の取り締まり体制は厳しくなっていくのだから。

禁煙を見ればわかると思う。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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