雇用の流動化は完全雇用で実現する

2018年10月27日土曜日

経済政策 政治

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一部企業人の界隈で雇用の流動化の為、解雇規制緩和の必要性を説く人達が増えている。
「会社が解雇をし易くなれば労働者の転職が促進され雇用の流動性が高まるだろう」
という理屈だ。

私は解雇規制緩和で雇用の流動性が高まるとは思っていない。
フランスのように厳しい解雇規制では雇用の流動性に影響するかも知れないが、日本の場合は一応解雇は可能であり、雇用流動性を損なうほど厳しいと思っていない。
経営不振による整理解雇は認められているし「業務態度が悪い」「能力が不足している」という理由でも解雇は可能である。
従業員を解雇する場合は30日前に通告するか30日分の賃金相当額を支払えば解雇は可能だ。
業務態度や能力不足で解雇するのは難しいが、明確な根拠があれば可能なはずだ。
そもそも企業の中で能力を数値で表せるぐらいにキチンと測定している会社がどれだけあるだろう。
「能力不足」と言いながら実はただ「気にくわない」だけというのが大半ではないだろうか。
或いはマネジメントが下手糞すぎて能力が発揮できないだけということも十分ありうる。
私も色々な会社で働いてきたがマトモなマネジメントを行っている会社の方が少ないぐらい、多くの会社の計画と管理は杜撰である。
杜撰な管理を改善しない限り労働局がダメ出しするのは当たり前である。
能力の測定もやっていないなら論外だろう。

仮に解雇規制緩和をしても実際に解雇が利用できる会社は少数派

先頃「働き方改革」により残業制限が導入された。
この残業規制・有給休暇取得義務、同一労働同一賃金といった労働法の遵守ですら半数の企業が「経営に支障」があると回答している。


労働時間などの待遇面は過去のデフレ時代の劣悪な待遇への反省から「規制強化」の方向へ向かっており、逆進する可能性は低い。ほとんど無いと言って良いと思う。

仮に解雇規制が緩和され「緩和解雇法」が制定されたとする。
ある企業が従業員を解雇した。
当然、従業員は労基署に異議申し立てをする。
その時当該企業で労働法を守れている企業がどれだけあるだろうか。
たとえ緩和解雇法上は合法的解雇でも労働法に違反していたら労働局・労基署はダメ出しをするだろう。
つまり半数の企業は緩和解雇法を利用できないことになる。
さらにその中の半数の企業は恐らく緩和解雇法で却下されるだろう。
どんな規制緩和でも規制が無くなるわけではない。

つまり解雇規制緩和を実施しても雇用の流動化への貢献度は限られたものになると思う。
ハッキリ言って大した効果は無いと思っている。

だから私は解雇規制緩和に賛成も反対もしない。
どうでも良い。

規制緩和の前に失業給付の制限解除

規制緩和で雇用流動性に貢献するのならばむしろ失業給付の支給制限を撤廃した方が成果が上がると思う。
現在の失業給付は自主退職した場合は3ヶ月間待機期間がある。
この制限があると貯蓄の乏しい人は退職を躊躇する。
若者に取って初めての転職は不安なものである。安心して退職し求職活動できるようにすべきだろう。
そうすれば自主退職者は増えて多少は雇用が流動化する。
ブラック企業対策にもなる。

雇用流動化の為に企業がやるべきこと

企業側にも改善余地がある。
雇用が流動化する為には退職しやすい雇用環境が必要だ。
退職しやすくするには雇われやすい雇用環境を作る必要がある。
そのためには現在の大半の企業が行っている「採用制限」を撤廃する必要がある。
採用制限とは以下のようなものだ。

(1)年齢制限
(2)性別制限
(3)過剰な経験年数制限(実務3年以上ぐらいなら良いが過剰な経験主義だと新しいことはできなくなり雇用の流動性は著しく損なわれる)
(4)長時間労働の要求など労働基準法違反の要求を強制する
(5)学歴制限(選考時に学歴を判断材料にするのは良いが最初から制限を掛けるのは問題)

大半の経営者は出口(解雇・退職)を大きくすることばかり主張するが、入口(入社・採用)も大きくしなければ、雇用の流動化は大きくならない。
社会へのダメージを最小減にするならば入口を先に大きくしてから、出口を大きくするべきだろう。
これらは企業が単独で取り組める努力である。
これらの努力を行わず「解雇規制だけ緩和しろ」では国会へ法案提出すらできないだろう。

毎日残業で勉強する暇も体力も奪い、自己の市場価値を高める時間を恒常的に奪っている会社の場合は解雇を許してはいけないだろう。
残業禁止・休日出勤禁止は解雇に至る前の最低条件だろう。
現実の会社では労働法などの法律すら守れているか怪しい。
解雇以前に労基署に指導されてしまう会社の方が多いのでは無いか。

会社の外部との交流の機会を増やすような取り組みをするというのもある。
サイボウズがやっているように副業を許可したり出戻りを可能にしたりするというのは転職を容易にする取り組みだ。

私は解雇規制緩和に賛成も反対もしない。
ただ解雇規制緩和を語る前にやるべきことがあるだろう。

(A)客観的な能力の測定(数値化できるレベルのもの)。
(B)自助努力の為の勉強や訓練時間が確保できること(事実上の恒常的残業の禁止)。
(C)中途採用の制限の緩和(年齢制限・性区別・超過労働要求などの禁止)。
(D)失業給付の支給制限の撤廃(自主退職は3ヶ月間支給されないなどの制限廃止)。
(E)オフィスワークを必ずしも強制しない雇用環境(30%ぐらいがリモートワークになる雇用環境)
(F)フルタイム労働以外の働き方の選択枝が一定数存在すること(短時間労働正社員など)

これ全部やれとは言わないが、(A)から(D)までは最低限満たしてから解雇規制緩和の議論をすべきだろう。
上記の条件を満たした会社だけ解雇規制を緩和するという法律でも良い。

雇用流動化の決定打は完全雇用

雇用流動化を実現する上で圧倒的な影響を持つのが、マクロ経済政策により完全雇用を実現することである。
一部の反安部の人々を除けばアベノミクスで雇用状況が改善したことは自明だろう。
民主党政権時代には失業率が5%台だったものが、現時点で2.4%にまで下がっている。
反安部の人々は「失業率が下がったのは生産年齢人口が減ったので人手不足になった」と説明しているが、2012年の就業率は70%だったのに対して、2018年8月は77%に達している。
就業率は7%も増えている。
生産年齢人口の減少が原因ならば就業率は変わらないはずだ。
不足した人員を埋めるだけになるはずだからだ。

増えた7%は今まで働いていなかった人々だ。
アベノミクスで明らかに雇用の椅子が増えたのだ。

アベノミクスは政府は雇用を生み出すことができることを証明した。
政府が正しくマクロ経済政策に取り組めば人工的に労働者の売り手市場を作り出せる。

労働者の売り手市場を維持できるのならば、労働者側は経営者側との交渉力を得る。
雇用がたくさんあるので何時でも辞められるからだ。

また、労働者側はより良い待遇の会社へ転職を繰り返すようになるので転職回数が増える。
解雇規制緩和より圧倒的に雇用を流動化するだろう。

インフレ率と失業率は逆相関する性質があり、インフレ率が上がれば失業率が下がり、インフレ率が下がれば失業率が上がる。
インフレ率が2%になったとき失業率がこれ以上は下がらない「完全雇用」状態になる。
「完全雇用」になると市場全体ではこれ以上就業者を増やせないので賃金上昇が起きる。
労働者の奪い合いである。

またインフレになると企業間の競争が激化する。
需要が増えていくので新規参入組が消費者を捉えやすい。
競争に負けて脱落する会社と、新規参入する会社が両方増えて、企業の入れ替わりが激しくなる。
これも雇用の流動化を進めるだろう。

私は総じて「規制緩和」や「構造改革」というものの効果に、あまり期待をしていない。
マクロ経済政策の効果に比べれば、その効果は微々たるものだからだ。

「小さな政府」も政府規模の縮小で有効需要が減少してしまうので反対だ。
有効需要が減少すればGDPも減ってしまう。

世間で「規制緩和」や「構造改革」で社会が良くなると信じている人は、もう少しマクロ経済政策に関心を寄せるべきだろう。
現在の日本が抱えている問題の大半は経済政策で解決してしまう。
正しい経済政策が中々進まないのは国民が経済政策に関心を持たないか、知らないからだ。

「規制緩和」や「構造改革」を考える前にその問題が経済政策で解決しないか考えてみて欲しい。


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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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