システムに業務を合わせるべき(2)-人間中心指向とシステム中心指向

2018年9月14日金曜日

システム開発

t f B! P L

従来、企業組織は人間によって運営されてきた。
情報処理を行える主体が人間しかいなかったからだ。
しかし、現在はコンピュータがある。かつて文房具の替わりとメールぐらいしか出来なかったコンピュータも、人間に代わってかなり多くの仕事をこなせるようになった。また、価格も安くなりかつて80万円ぐらいの価格だったPCは、15万円程度になった。
あらゆる機械の価格が安くなっている。
もし、人間とコンピュータが同じ仕事をこなせるのならばコンピュータにやらせた方が安上がりになるようになった。
少なくとも事務仕事は、大半コンピュータに任せられる。
営業は機械化出来ないが「新規顧客開拓」はだんだんWEBを中心としたコンテンツマーケティングに比重が移り、人間は「既存顧客の新規要望開拓」に移りつつあると聞いている。
エンジニアの仕事も自動化が進んでいるがエンジニアの場合は自動化されると出来る仕事の種類が増え新たな仕事が発生するので仕事が減る様子は無い。
しかしどの業務も業務全体に占める機械労働の割合は増えるばかりである。

現在の日本企業の業務は、人間が業務を遂行することが前提で設計されている。
情報システムの開発も人間の業務に合わせて開発される。
「業務にシステムを合わせる」のである。
この考え方を「人間中心指向」と呼ばせてもらう。
哲学の「人間中心主義」や、製品開発の「人間中心設計」とは関係ない。

しかしこのやり方では、システムを導入しても生産性は向上しない。
人間の情報処理速度に合わせてシステムが稼働するため、業務処理速度は早くならないし稼働時間も人間の労働時間と同じである。
もし、多少柔軟性に欠けていてもコンピュータに業務が遂行できるのならば、主な業務はコンピュータにやらせ、人間はコンピュータにできない仕事だけ手伝う形で業務手順を設計した方が、生産性は上がる。
「システムに業務を合わせる」のである。
この考え方を「システム中心指向」と呼ばせてもらう。

図書館の貸し出し業務を例に人間中心指向とシステム中心指向の業務手順を考えてみよう。

現在の図書館は人間中心指向で設計されている。
その業務は、書籍を仕入れ館内の本棚にテーマ別に人間が分類して格納する。
顧客の個人情報を控え、顧客が本棚から取りだした本を司書が貸し出し手続き(事務処理)を行い、顧客に引き渡す。

顧客が返本するときは、司書が受け取り返本手続きを行い、後にまた本棚にテーマ別に人間が分類して格納する。

返本が遅れた場合、人間が顧客に電話を入れて返本を促す。

この業務手順に合わせてシステムを導入すると次のようになる。

書籍が現在どこに存在しているかを管理し司書に伝えるシステムを開発することになる。書籍入荷の際、PCで書籍の情報を手入力する。
顧客情報をPCで手入力する。
顧客へ貸し出し情報をPC手入力。
返本も手入力。
手入力はバーコード読み取りでも良い。
本棚にテーマ別に人間が分類して格納する際はタブレットでどこの本棚に何の本を格納したかを手入力する。

ごらんのようにこのシステムではあまり生産性は上がらない。
本の検索が容易になり貸し出し管理が容易になる程度である。

では、この業務をシステム中心指向で設計したらどうなるか考えてみよう。

入荷した本には全てRFIDを組み込む。
本棚にはRFIDリーダを設置しシステムのサーバとネットワーク接続する。
本棚へ本を格納するときは、いちいち分類しないで空いている本棚に格納する。
本棚に格納すると自動的に本をどこの本棚に格納したかというデータがシステムに登録される。
本の格納と取り出しはロボットが行う。
本棚はただの倉庫でも良い。(予算が無ければ人間のアルバイトがこの作業をやっても良い)

現在、図書館に存在する本は、別室の大画面スクリーンに平積みになった本のように表示される。
スクリーンは室内に複数台設置し本棚のような景観を作り出す。
顧客はこのスクリーンを見て本を選ぶ。
スクリーンの本をタッチし個人IDを入力する(IDカードを翳す)。
顧客は受け取り窓口に行き、個人IDをタブレットに入力すると窓口に本が運ばれてくる。顧客が受け取ると自動でシステムに貸し出しの記録が残る。
本は持ち帰っても良いし、読書室で読んでも良い。
返本の際は、窓口の返本口に1冊づつ本を入れる。
RFIDで返本を確認しシステムが返本を記録しロボットが本棚に格納する。
返本が遅れた場合は自動メールで返本を促す。
図書館はIDカードをID読み取り機にかざさないとドアが開かず入館することができない。
1人づつしか入れないように回転ドアになっている。

回転ドアの外には、個人IDカードの発券機が設置されている。
身分証明書を写真撮影し個人情報を入力すれば発券される。

システム中心指向の図書貸し出し業務には人間は必要ない。
コンピュータとロボットとセンサーだけである。
人件費がかからないので予算を設備投資にまわせる。
人間が必要ないので24時間365日稼働できる。
人工知能のような高度な技術は必要ない。

図書館司書は貸し出し業務以外の業務に専念できる。

※「ここまでやるなら電子書籍の図書館作れば?」という突っ込みは無しです。
この例はあくまでシステム中心指向で業務手順を設計したらどうなるかを描いた参考例にすぎません。
ちなみに紙の本はデバイスとして優れているので無くならないと思います。
(電力がいらない。データの長期保存が可能などの理由で優れています)

人間中心指向では業務手順を遂行しやすいように人間を標準化する。
まず雇う段階で1日10時間、週50時間働ける人間のみ雇う。
能力的にも同じような事務処理能力を持つ人間を雇う。
書類を扱いやすいオフィスに人間を格納し、全員同じ時刻に同じ時間働き流れ作業で書類を処理していく。

個々人の個性は同期(シンクロナイズ)的作業の妨げになるので去勢する。
体育会系のシゴキもだいたい個性と自我の去勢が目的だ。奴隷を生産しているのである。
このように作成した「人間情報処理機」の上で業務を稼働させる。

システム中心指向では、目的を達成するためにコンピュータ・ロボット・センサー・ソフトウェアなど機械から設計する。
人間は機械に出来ない作業だけ行うよう業務手順を設計する。
この過程において人間の標準化は行わない。
システムが仕事の中心になるので人間を標準化する必要がないのだ。
人間に対してはせいぜいシステムの使い方を教育するぐらいだがこれも人間に使いやすいようにUIを設計するのでたいした負担にはならない。
UIは「人間中心設計」になるだろう。

システムは24時間休みなしで稼働できるので、人間は全員同じ時刻に同じ時間働く必要が無い。人間はあくまで機械の手伝いなので「必要なときに必要なだけ」居れば良い。
夜の時間帯はネットワークで地球の裏側の労働者に働いてもらえば良い。
ホワイトカラー業務ならリモートワークは可能なはずである。

人間中心指向は生産量を上げるためには、人間に対して非人間的な労働を強いざる得ない。人間性もある程度剥奪せざる得ない。

システム中心指向ならば、人間を規格に合わせて去勢する必要が無い。
UIは人間に合わせるのだから。
現在の日本企業はわざわざ生産性が低く不幸な働き方をしていることになる。

「システムに業務を合わせる」とは、「機械中心に業務を根本から作り替える」ことを意味する。

以上が二つ目の「システムに業務を合わせる」理由である。

次回は三つ目の理由を説明する。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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