優生思想の二つの間違い

2018年8月30日木曜日

経済政策 道徳常識

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 最近「優生思想」と思われる考え方が蔓延し、具体的に雇用や生活において排除や差別につながり、ひどいケースでは19人の障害者が虐殺される事件まで起こった。
犯人は「日本が財政的に苦しいから日本のために障害者を殺した」と供述しているという。

 優生思想を簡単に説明すると

「社会は優秀な人間だけで構成されるべきであり無能な人間は社会資源の無駄な浪費になるので消えるべきである」
「優秀な人間の遺伝子だけを後世に残せば社会は繁栄するので、無能な人間の遺伝子は残すべきではない」

「障害者の生活費は社会の無駄であり障害者の歳出を減らせばその分労働者の生活は豊かになる」
「働かざる者食うべからず」

と言ったところだろう。

結論から言えば上の二つは「生物の生存戦略」として間違っている。

下の二つは経済学的に間違っている。

生物として生存確率の高い繁殖のあり方は


昔学校の教科書にこんな話が載っていた。

19世紀のイギリスでは白い蛾が繁殖していた。
白い柏の森で天敵の鳥に見つかり難いためだ。

しかし、産業革命で蒸気機関の出す煤により森は黒く汚れ白い蛾は鳥に食われて激減し、代りに黒い蛾が繁殖したそうだ。

優生思想はその時代の基準で優秀な人間を選別して優秀な人間の遺伝子だけ後世に残すという思想だ。
この考え方の問題点は優秀な人間の選別基準がその時代に都合のよい人間だけを選ぶところにある。

先の蛾の例の場合、もし優生思想で「白い蛾」だけを残し「黒い蛾」の遺伝子を残さなかったらどうなっていたか?

産業革命で「蛾」が全て滅びていただろう。

優生思想の愚かな点は人間に優秀な人間を選別する知性が有ると勘違いしている点にある。
人間にそんな能力は無い。

人間にできるのは出来る限り多くの種類の遺伝子を後世に残し「下手な鉄砲数打てば当たる」戦略で生存確率を上げることだけだ。


HIVウィルスが初めて世間の注目を集め世界がエイズパニックに陥っていたとき、アフリカの一部の人々の中にエイズに感染しても発症しない人々が発見された。

ウィルスというのは2,3年で進化するのでワクチンを開発しても数年後にはワクチンの効かない新種が現るので何かワクチン以外の画期的治療法が発明されない限り、医学とウィルスのイタチごっこは永遠に続く。

人類は人口増加によって非常に多種多様な遺伝パターンを生み出した。
いくらウイルスが強力な毒性を持っていても何十億もの遺伝パターンの全ての個体で確実に自らの複製を増産できる万能ウィルスは確率的にほぼあり得ないだろう。

つまり人類の生存確率を高めているのは遺伝的多様性なのだ。

例えば人類が優生思想によって、健常者のアングロサクソンの遺伝子だけ残し、障害者や有色人種の遺伝子を後世に残さなかったら。
障害者や有色人種の中にウィルスの抗体が含まれていたかも知れない。
その抗体が失われていたことにより人類がウィルスにより絶滅してしまうことになる。

障害者が将来の人類にとってどのように有益な遺伝子を保有しているか誰にもわからない。
ゲノムの検査をしたところで、将来どんなウィルスが誕生するか分からないので無意味だ。

もう一度言うが人類が生き残る為には、出来る限り多くの種類の遺伝子を後世に残し「下手な鉄砲数打てば当たる」戦略で生存確率を上げることだけだ。

将来の人類に訪れる危機は誰にも予測できない。
その時に備えてできる限り多くの「遺伝子」という武器を保有しておく必要があるのだ。

経済が良くなる生産者と消費者のバランスとは


貨幣経済活動は「売り手」がモノを売り「買い手」がモノを買うから成り立つ。
「売り手」のモノと「買い手」の金を交換することで成り立つ。
「売り手」の数と「買い手」数は同じでなければならない。
バナナを売る者が十人いても、買い手が八人しかいなければ、バナナは八本しか売れない。逆も同じである。

「売り手」は生産者である。「買い手」は消費者である。
「売り手」は供給であり、「買い手」は需要である。

靴を年間80束生産する村で100人村民が居ても80束しか売れない。
靴を年間100束生産する村で80人しか村民が居なくても80束しか売れない。
100束の靴を売る為には、靴を年間100束生産する村で100人村民が居なければならない。

現在、日本を初め先進国では技術の進歩で機械による生産性が向上して、全体的に「供給過剰の需要不足」になっている。
一般的にはデフレと呼ばれている。

実際のデフレは供給量に対する通貨の流通量が不足することで起こる通貨現象のことであり需要不足を意味するわけではない。
しかし、通貨が不足すると通貨の価値が高騰し物価が下がる。
通貨の価値が上がると人々はモノや土地や株などを通貨に交換してしまう。
結果として通貨は取引に使われなくなり預金として塩漬けになり経済活動に使われなくなってしまう。
国全体、市場全体の取引の総量が減り、経済と市場が縮小する。
取引の総量は所得の総量と同じなので、国民全体の所得が減ることを意味する。
所得が減れば消費(需要)が減るので、「供給過剰の需要不足」になる。

従って、デフレは需要不足と同義で語られることが多い。実際は通貨現象(通貨不足)である。

どちらにせよ現在の日本は需要不足、つまり消費者が不足している(消費者の持つ金が不足していると同義)のだ。

消費者不足の経済ではあらゆる消費者は貴重な存在である。
当然のことながらそこには「障害者」も含まれる。

「構造改革主義」や「生産性の向上」をやたらに叫び、「歳出削減」をやりたがる人々は「供給過剰の需要不足」の経済の中で「生産性の向上」によって更に供給を増やし、「歳出削減」によって需要を減らしているのである。
ハッキリ言ってアホである。
デフレ経済下の日本では逆に「歳出拡大(積極財政)」によって需要を増やさなければならない。
そうしなければ「余分に生産したモノ」が売れないのだ。
需要と供給はバランスしなければならない。
生産したモノは全部消費しなければ全部売れないのだ。

消費者の不足している現在において働けない障害者も稀少な「消費者」であり、経済活動に必要な存在である。
障害者を殺せば、その障害者の消費していたモノやサービスを生産していた者の所得が減るか失業するだけで、経済的には誰も得をしないのだ。

優生思想と国家財政的理由で障害者を19人殺害した犯人は、19人の消費者を消滅させたのであり、その19人の消費者が消費していたモノの生産者の所得を失わせた。
19人分経済を悪化させただけの大間抜けである。

「働かざる者食うべからず」もこれはデフレ経済的には逆である。
「食わざる者働くべからず」の方がデフレ対策には相応しい。

優生思想を語る奴はバカである


 優生思想というのは「将来の国の発展の為に乏しい財源を優秀な遺伝子を持つ人材に集中する為に優秀ではない遺伝子を消しましょう」という思想だ。
 この文書を読んで「いったいどこが悪いのかわからない」と思った人はバカだ。
 この文書には二つの間違いがある。

 「乏しい財源」と「優秀な遺伝子」だ。

 「乏しい財源」と言うが日本の財政は極めて健全であり社会保障・福祉・教育・防衛など、何をやるにも必要な予算は拠出できる状態にある。
 このことはリフレ派と呼ばれる経済学に詳しい人々と公共事業派、或いはケインジアンと呼ばれる人々によって過去七年ぐらいの間に非常に詳しく説明されている。(経済学者は十数年も説明を続けている)
 これについてキチンと説明するとそれこそ何万字という情報量になるのでここでは説明しないが、以下のサイトで簡単に説明しているので読んでみて欲しい。

財務省にだまされてはいけない(森永卓郎)

 「優秀ではない遺伝子を消しましょう」の理由が「財源が無い」なのだが、そもそもその前提が間違っているのだ。
 景気とデフレ対策として国債は発行すべきだし発行すればあらゆる予算は確保できる。税金を節約しなければならない状況ではない。

 次の「優秀な遺伝子」だがこの言葉自体が矛盾を孕んでいる。
 「優秀な遺伝子」というのは「環境に適応した遺伝子」のことだが環境というものは次々変化していくものだ。先の蛾の話のように環境が変われば適正遺伝子も変わってしまう。「優秀な遺伝子」を定義しようとすると環境条件を固定しなければならないが、生憎環境は「諸行無常」である。環境条件を固定することはできない。
 従って「優秀な遺伝子」を定義することは出来ないのだ。
 「優秀な労働者」の定義もここ数年急速に変わり始めている。
 金融緩和による失業率の低下と働き方改革により「長時間労働を厭わずに行う労働者」の評価や価値は下がり続けている。
 現在は「残業することなく成果を上げる労働者」の評価が高まっている。
 だいたい労基署の取り締まりが厳しくなったのでどちらにせよ経営者は長時間労働を強要することは出来なくなってきている。だから評価できないのだ。
 政府が少し本気になっただけでこんなに世の中の価値観は変わるものなのだ。「優秀な労働者」を長期的に定義できるはずが無い。
 私は「障害者」の定義すらどんどん変わっていくと思う。
 ICTを活用したリモートワークが普及したら身体障害は働く上であまり障害にはならないと思う。
 発達障害も大半がオフィスでのコミュニケーションの問題なので、テキストによる非同期通信が主流になれば現在ほど問題ではなくなるかも知れない。完全に無くなるとは思わないが。

 優生思想を支持する人々が理解していないのは「経済学」と「諸行無常」である。
 これは「知恵が無い」のと同じだ。

経済初歩の解説書の紹介


 誤解の無いように言っておくが私も別にキチンとした「経済学」教育を受けたわけでは無い。ただ数年間リフレ派の出版する書籍を読み続けていると経済学の初歩と日本の財政とその考え方は分かってくる。
 学問として経済学を学ぼうとすると高度な数学が必要になるが、正しい経済政策を判断する為の経済学の初歩だけ把握するだけなら高校生でも理解できると思う。
 簡単な参考書として以下の本を紹介しておく。

キミのお金はどこに消えるのか

たった1つの図でわかる! 図解経済学入門

 他にも良い本は沢山ある。
 しかし、この二冊を読んだら次は「ミクロ経済学入門」「マクロ経済学入門」というタイトルの本に進んだ方が良い。

 私が「経済学」に魅力を感じるのはビジネス・取引・働き方・生活全般の金に纏わる善悪判断の基準になるからだ。
 先に説明したように「障害者」というものに関する社会的位置づけも経済学的に考えると一般的な考え方と違う道徳観念に気付くことになる。

 ITと経済学基準で世の中を俯瞰すると「普通」とは異なる気付きが得られる。
「普通」と呼ばれる価値観はかなり間違っているので、
それを今後書いていきたいと思う。

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オッサンです。実務経験は Windows環境にて C#,VB.NET ,SQL Server T-SQL,Oracle PL/SQL,PostgreSQL,MariaDB。昔はDelphi,C,C++ など。 趣味はUbuntu,PHP,PostgreSQL,MariaDBかな ?基本無料のやつ。

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